久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ロッド・スチュアート「マギー・メイ」 この曲はイギリスの歴史を背負っています。それがアメリカに渡ってロックンロールとなって帰ってきたような気持ちにさせてくれるのです

 

今までたくさん泣ける曲というのを書いてきましたが、胸が張り裂けるようになる曲というのはロッド・スチュアートの「マギー・メイ」です。

なぜそんなに熱いものが込み上げてくるのか、それは、この曲がイギリスの歴史を背負っているからでしょう。そして、それがアメリカに渡ってロックンロールとなって帰ってきたような気持ちにさせてくれるからです。

歌は売春婦の歌です。売春婦かどうか分かんないですけど、若い男を囲っている女性の歌です。ビートルズにも「マギー・メイ」という、リバプールの港町に住むコソ泥の売春婦を歌った民謡をカヴァーした歌があります。だから普通マギー・メイっていうとそういう女性なのかなと想像するわけです。めっちゃ古いですけど、日本でいうとローズさんとか港のヨーコとかそんな感じです。ビートルズに歌われるマギーさん、今ウィキで知ったのですが、悪い女性だったのかとびっくりしました。ロックで歌われる売春婦というのはいい人ばかりなのです。

ロックにとって売春婦というのは、マリアさま、誰にもやさしくしてくれる女性の象徴なんです。ずうっと探し求めている存在なのです。

日本でいうと出雲の阿国ですかね。ボブ・ディランも映画『ローリング・サンダー・レヴュー』でキッスに引っ掛けてわざわざ阿国の名前をシャロン・ストーンに言わせています。それくらい大事なことなのです。ロックのルーツというのは売春もしていたと言われる出雲の阿国までさかのぼれるのです。

 

 

 

「マギー・メイ」の歌詞を初めてちゃんと読んだら、日本のウィキに書かれているような感じではなく、スケベなマギーは泥棒の罪をきさせられて、もうライム・ストリート(中心地)で客をとれなくなって、元いた港で働かなくっちゃいけなった、港での給料は1週間に2ポンドと10ペンス、可哀想だなという歌でした。

日本でウィキなんかを更新してくださっている人は売春婦なんて汚らしい職業って思って書かれているのでしょう。

 

 

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tags: Faces Rod Stewart The Zutons

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