久保憲司のロック・エンサイクロペディア

シド・バレット『バレット(その名はバレット)』 –狂気ってどういうことか。シド・バレットの2枚目のこのソロ・アルバムを聴けばよくわります

 

ピンク・フロイドにいたシド・バレットはなぜ気が狂ってしまったのだろうとよく考えます。

ピンク・フロイドはそのことについてアルバム『ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン(狂気)』を作りました。そして、そのアルバムが自分たちが目標としたビートルズよりも売れて、自分たちがもうこれまでのバンドとは違ってしまったことから生まれる狂気から気が狂ってやめたシド・バッレットに君がいてくれたらどんだけ助かったかと『ウィッシュ・ユー・ワー・ヒアー(炎〜あなたがここにいてほしい)』というアルバムを作ったのです。

 

 

そして、バンドとお客さんの間には大きな壁が出来たと思った彼らは『ザ・ウォール』というアルバムを作り本当にステージに大きな壁が出来ていくステージを考え、実行しました。

 

 

本当に気が狂ったバンドだったなと思う。

デヴィッド・ボウイはそんな彼らが大好きで、デヴィッド・ボウイのあのカーリー・アフロ・ヘアーはシド・バレットに憧れてのものでした。ボウイが病気で世間から姿を消すまえのライブの一つ、最後のロンドン公演はピンク・フロイドのゲストとしてでした。楽屋口で、ボウイは「お母さんに連れてもらって、マーキーの公演に行ったんだよ」って、嘘をつきながら、彼がどれくらいピンク・フロイドを好きかったかと語る動画はYouTubeで見れます。そこを偶然通ったピンク・フロイドのヴォーカル/ギターのデイヴ・ギルモアに「(お前テレビ・カメラの前でよくも)お前、よくそんな嘘言えんな」と呆れられています。

 

 

マーク・ボランもシド・バレット・フリークで、ピンク・フロイドと同じ事務所に入りました。事務所の女性と付き合ってからなんですけど、もちろんその女性に接近したのは、シド・バレットの事務所で働いていたからです。もちろん彼もシドと同じカーリー・アフロ・ヘアーでした。マーク・ボランが二人組でやっている時のお伽話のような歌はもちろんシド・バレットの影響です。

 

 

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジもジェフ・ベックからもらったテレキャスターにはシドの真似をして、銀色の丸いシールを水玉模様に貼り、そこに照明が当たるとミラー・ボールのように光が拡散するようにしていました。

 

 

しかし、あの髪の毛をカーリー・アフロ・ヘアーにしたのは、エリック・クラプトンが先だったのか、シド・バレットが先だったのか気になる所です。なぜアフロかといいますと、黒人に敬意を表してでした。

デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、ジミー・ペイジなど、後の大スターが憧れる存在なのに、なぜこんな天才が気を狂わしてしまったのか。

 

続きを読む

(残り 1740文字/全文: 2881文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

tags: David Bowie Pink Floyd Syd Barrett

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ