カーリー・サイモン『ノー・シークレッツ』 60年代に革命はあったけど、まだまだ女性アーティストの扱いって、そういうものだったのです
ロックにとって一番大事なものそれはホテルです。
そりゃスタジオも、会場も、移動も大事ですよ。
でも、やっぱり一番大事なのは、ホテルです。
あっ、食事も大事です。
ツアー中に先輩から最初に教えられることは、「レストランではお行儀よくしていろ」です。
レストランで横柄な態度をとると、先輩から「お前はバンドマンとして一番やってはいけないことをやっている」と怒られます。「お前のクソ・ロック・スターの態度を見たら、シェフが、チンカスを入れたり、ウエイトレスさんが、持ってくる途中にツバをかけたりするんだぞ、安心して食べれないだろう」とブチ切れます。
レストランではお行儀よくしてないといけないのです。チップも絶対忘れてはいけません。
ホテルでもそうです。ちゃんと枕元の下にチップを入れとかないと、使っている歯ブラシを穴の穴に突っ込まれていたり、トイレの水で洗ったりしています。
これがロック・バンドの現実です。
そうそう、中田カウス師匠じゃないですが、バンドマンで一番最初に教えられることは「ファンの子には手を出すな」です。
そんな昔のことが色々と思い出されたのが、キャロル・キングの『つづれおり』と並ぶ女性シンガーソング・ライターの傑作カーリー・サイモンの『ノー・シークレッツ』です。
キャロル・キングの『つづれおり』がどれだけ時代を表したアルバムかはこちらに書いています。
この何気ないジャケット、実はロンドンを代表するロックンロール・ホテル、ポートベロー・ホテルで撮られているのです。
ノッティング・ヒル・ゲートにある何気ないプチ・ホテルなんですけど、実にいいホテルなのです。
ミック・ジャガーがラブ・ホテル代わりに使っていたとされるホテルです。ホンマか!
でも、部屋の真ん中にお風呂があったりする部屋がですよね。水道管の問題でそんなことをしたと思うのですが、60年代にそれをやっていたのは画期的だなと。あと映画なんかで貴族が部屋の真ん中で、下女にお湯を入れさせたり、体を洗わしたりしているシーンがあったりしますが、あの感じです。部屋ベチョベチョになるやんと思ったんですが、イギリスは乾燥しているからか、なんとかなるものです。毎日、お風呂に入る日本人にはけっこうキツい設定だったかなと思ったりもしたような気がしたんですけど、忘れました。
あのスパイダースが初めてロンドンに行った時もこのホテルに泊まってました。
それくらい由緒あるロックンロール・ホテルです。
このホテルでかっこいいのは朝飯食うとこが、夜はバーになっていて、勝手にキッチンから酒を持って来て、飲んだりするんです。で、次の日の朝にフロントに行って「昨日、シャンペン、一本頂きました」と申請するのです。友達の家に泊まりにきた感じを出しているです。
このアルバムとか、イーグルスのデビュー・アルバムの頃、71年と72年は本場アメリカよりもイギリスの方がロックの王道(売れる)みたいなイメージになっていて、アメリカのアーティストたちはロンドンにレコーディングしに来て、カーリー・サイモンはミック・ジャガーの不倫相手みたいなイメージを出さされていたのです。
今から考えると酷いアイデアですよね。ジャケット見たら、乳首も見えていたりして、絶対わざとですよね。アルバム・タイトルが『ノー・シークレッツ』って。こういうのエロいよねって買ってたわけです。
日本だと大塚愛の『LOVE JAM』とかですよね。どう考えてもAVのぶっかけを意識してますよね。これくらいインパクトあるジャケットにしないと売れないからとか、会議で言ってそうですよね。
今だと完全にアウトです。
キャロル・キングの『つづれおり』も全部不倫の歌と言えばそうですし。
そんな女性は男性の下みたいなイメージから、ロックが花開くのって、パンクの頃なんです。パティ・スミスもそうですけど、やはりブロンディでした。
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