久保憲司のロック・エンサイクロペディア

デヴィッド・ボウイ『スケアリー・モンスターズ』 –すごい大げさに物事を言っているんだけど、あれ全部ロバート・フィリップのユーモアなんだよね

 

ロバート・フリップのギターが好きです。ジミー・ペイジのギターもかっこいいですけど、一番しっくり来るのはキング・クリムゾンのロバート・フリップのギターです。

彼については“『クリムゾン・キングの宮殿』全曲解説”『太陽と戦慄 Part2』、そして、ブライアン・イーノの『ヒアー・カム・ザ・ウオーム・ジェッツ』で語っています。

でも、やっぱりそんな彼の一番の名演はデヴィッド・ボウイの『スケアリー・モンスターズ』だと思うのです。

 

 

 

 

頂点は『レッド』なんでしょうけど。

 

 

 

 

今思うと、『スケアリー・モンスターズ』はボウイのポスト・パンクだったのだなと思うのです。

ベルリン三部作、大ブレイクした『レッツ・ダンス』に挟まれて、忘れ去れがちですが、『アラジン・セイン』に匹敵する名盤だと思うのです。

 

 

 

 

『アラジン・セイン』も『ジギー・スターダスト』と『ダイヤモンド・ドッグス』に挟まれていて、ボウイの最高傑作だということが認識されないアルバムですよね。

僕も子供の頃は、ジギー・スターダストというキャラクター辞めると言ってたのに、なんでまたアラジン・セインなんてダサい名前のキャラクターになるのと思ってたのですが、先日アラジン・セインというのがコックニー、イギリス人大好き似ている言葉をやっていて、ア・ラッド・インセイン(気が狂った男)という意味なんだと気づいて、すごいアルバムだなと再認識しました。全部気が狂った男が見ている世界と捉えれば、すべて辻褄が合うアルバムです。

しかしイギリス人こういうの好きですよね。ブリトニー・スペアーズがビールって意味なんですけど、なんでやねんと思いながらも、なんとなく分かると思ってしまいます。日本でいうコギャル語みたいなのを40歳くらいのおっさんがパブで言っているわけです。だからアラジン・セインと響きには、気の狂ったイギリス人がみた世界(おもにアメリカ)という感じがよく出ていていいんです。

そんなボウイの傑作アルバムで弾いているロバート・フリップのギターがすごいという話をしようと思っていたら、ボウイの話になってしまいました。

でも、本当聴いてみてください。彼がプレイしてるのは「イッツ・ノー・ゲイム」「アップ・ザ・ヒル・バックワーズ」「スケアリー・モンスターズ(アンド・スーパー・クリープス)」「ファッション」「キングダム・カム」「ティーンエイジ・ワイルライフ」です。このアルバムはピート・タウンゼントも弾いているのですが、ピートが「俺もっと弾いてたはずなんだけど、アイツ、俺のプレイ使わなかったんだ」と怒ってます。

 

 

変わったギターリストです。

舞踏作家、作曲家なのに精神世界や心身統合的セラピーへの影響などで知られるグルジェフに傾倒していたりしていました。

 

 

 

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tags: David Bowie King Crimson Robert Fripp

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