職場は恋愛やセックスや結婚をする場ではなく、仕事をするところ—猫町倶楽部初体験(3)-(松沢呉一)
「明治時代は教会で恋に落ちた。今は読書会で恋に落ちる—猫町倶楽部初体験(2)」の続きです。
職場は恋愛するところではないと考える人々の増加
猫町倶楽部の読書会で知り合って結婚したのが60組以上という事実は、こと恋愛や結婚に留まらない社会の現実をよく見せてくれる現象であり、このことは深く掘り下げる意義があります。
「マクドナルドCEO解任に見る社内恋愛禁止の論理—懲戒の基準[36]」で見たように、外資系企業ではあれ、上下間ではなく、対等の同僚の間での恋愛の告白で懲戒解雇になる例が出てきていて、いずれこれが日本でも標準になることは必至だと思います。
その根拠は、日本でも職場で恋愛、セックス、結婚の欲望を満たそうとする人々が激減してきているってことにあります。現段階でも、全面禁止になることに反対する人を賛成する人が上回ると推測できる上に、これまでその欲望を職場で満たしてきた人たちでも、曖昧なセクハラの基準で解雇になるくらいだったら、すべてなしにした方がすっきりすると考える人は多いのではなかろうか。
私はセクハラの要件を厳密にすべき、つまり今現在日本の民事裁判で認められる範囲に留めるべきとずっと言ってきたわけですが、セクハラと性差別と強制わいせつと不適切な性行動との区別がつかない国では恋愛の恨みを晴らす道具、気に食わない存在を貶める道具にされることを避けられない。20年前から予見できてきたことがいよいよ現実になったことをそろそろ皆さん実感しているのではなかろうか。
そもそも仕事上で恋愛する関係が業務にまったく影響しないわけがなく、公平性が損なわれる危険が大です。ケジメがないのです。
同じ職場ではないにしても、利害を共有する和泉洋人首相補佐官と大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官を見たって、公費で京都に行ったらデキている2人はデートもしましょうよ。デートしたら腕を組むでしょうよ。で、「週刊文春」にまんまと写真を撮られてやがる。仮に2人が肉体関係がないのだとしても、なんですかね、あのザマは。とくに税金で食っている人たちがこういうことをするのはもうやめた方がいいと思うな。
今のところ、懲戒処分はされていないようで、公費での出張先であろうとも、私的な時間で自腹でデートしている分にはいいってことでもあるのですけど、こういう関係の人たちが同じ業務を担当すること自体、問題ありでは?
自腹でホステスと遊んだり、ソープランドに行ったりしている人たちの方がどれだけ清潔か。
※2019年12月11日付「文春オンライン」掲載「安倍首相補佐官と厚労省女性幹部が公費で「京都不倫出張」より
明治時代のお見合いと今の時代のお見合い
私はすっかり「社内恋愛禁止・社内セックス禁止」賛成に転じているわけですが、いくつか問題や危惧があります。すでに書いたように、そのひとつは「その空白をどうやって埋めるのか」という問題です。
かつては家同士の事情で決定される結婚を象徴するのが見合い結婚、対して恋愛結婚を象徴するのは職場結婚でしたから、見合い結婚は古い時代の結婚として忌避されてきたわけですけど、今は内実が変化するとともにイメージも変化してきていて、むしろ見合い結婚の方が外向きで積極的なものとなり、職場結婚はケジメのない安易な結婚といったイメージがついてきているように思います。
実際、今の時代のお見合いはそんなに悪くないと思うんですよね。人の紹介だけでは限界がありますが、今はコンピュータが探してくれます。
そんなもんばかり調べているので、最近その手の広告がよく出てくるのですが、以下はイオングループの「結婚相手紹介サービス」であるツヴァイのサイトに出ていた数字です。
職場で年間に、結婚する意思のある独身の156人と出会うことは無理でしょ。しかも、この156人はコンピュータに選別されているため、大きく外れることは少ないはずです。
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