松沢呉一のビバノン・ライフ

自殺か国外逃亡か投降か、ウクライナ政府の呼びかけに呼応するロシア兵たち—「私は生きたい」プロジェクトの成果-(松沢呉一)

 

誰が運転をしていたか

 

vivanon_sentence

クリミア大橋の爆破はお見事。

 

 

これは速報なので、人的被害は報告されていないとなってますが、その後、橋を渡っていた車両に乗っていた数名の死亡が確認されています(追記参照)。

クリミア大橋の一部が崩落して当面車両は通れない。鉄道も、少なくとも数日、おそらくは数週間使えないことの影響については報道されている通りですが、どうしてこれが可能になったのかが気になります。

ロシアはいつものようにロクに調べもしないで、列車の爆発だと適当な発表をしていますが、素人が見たって道路の爆発が先です。トラックに爆薬が積まれていたのか、橋に爆薬が仕掛けられていたのかは素人には判断不可能。

これまで同様、クリミアについてはウクライナ軍は自らの関与を明らかにしていません。正規軍によるものか、パルチザンによるものかさえ戦争が終わるまで公表されないかもしれない。かといってロシアの発表は信用できず、それ以前にロシアには調査能力があるとは思えない。西側メディアも現地で取材することは困難だと思われます。

車両が爆発した場合、誰が運転していたのかが気になります。早朝の交通量がもっとも少ない時間帯ですから、リモコンによる無人トラックが走っていても怪しまれないのかもしれないですが、確実に目的地に到達するためには人に運転させるでしょう。自爆覚悟のウクライナ人じゃなければ、爆発物であることを知らずに運搬を依頼されたロシア人、あるいはクリミアに住むウクライナ人です。

あんだけ民間人を殺害しているロシア軍に対抗するために、一人や二人ロシア人の民間人が犠牲になっても仕方がないとも思わないではないのですが、気になることは気になります。気にしても、あの爆発力ですから、もろともに運転手は吹き飛んで海の藻屑となって、誰が運転していたのかも未来永劫謎のままになりそうです。

追記:死亡者は3名で(その後5名という数字も出ている)、うち1名は爆発したと見られるトラックの運転手。この運転手の身元は絞られつつあって、単なる巻き添えになった可能性もあり。ロシアもトラックが爆発源で、列車に引火したと言い出してますが、爆発元はトラックではなく、橋桁に仕掛けた爆薬、あるいは海上の船だという説が出てきています。たしかに映像でも道路の外側から爆風が起きているように見えます。海上であれば、リモコンによる無人船であっても怪しまれないでしょう。また、道路の一部は残っているため、乗用車は通行できています。その点は惜しかった。

 

 

投降の際にはその旨を敵国に一報しておきたい

 

vivanon_sentence

前回書いたロシア人たちの自殺が相次いでいることも気になります。それもまたプロテストの方法であることは認めつつ、続々ウクライナ軍に投降しているロシア兵がいることや、脱走して指名手配されたロシア兵も多数いること、部隊内蜂起さえ起きているらしきことを考えると、死なずに闘う方がいいと思います。ただ、闘うこと自体を拒否したい人たちもいますから、その人たちはビルから飛び降りるか、錆びついたカラシニコフの銃口を口の中に突っ込んで足の指で銃爪を引くということで。

いまさらながらの内容ながら、「ロシア人はもはや自殺するか逃げるしかない」という内容の映像をウクルインフォルム系のテレビ局(つまりは国営)UATVが数時間前に出してました。

 

 

もうひとつの選択肢である入隊してから投降するという方法についてもUATVが出しています。

 

 

 

next_vivanon

(残り 872文字/全文: 2484文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ