松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア人パルチザン組織Stop the Wagonsの戦果を確認する—かつてナチスドイツに向けられた鉄道戦争がロシアで復活-(松沢呉一)

 

「Stop the Wagons」の華々しい戦果

 

vivanon_sentence昨日、米国のマーチングバンドをYouTubeで聴きながら、ロシアに関する記事をつらつら見ていたら、目を見張る反戦団体の成果を発見しました。

 

2022年10月27日付「sky news

 

 

10月24日、ベラルーシに駐留するロシア軍用の物資をモスクワから輸送する線路が、ウクライナとの国境近くのブリャンスク州で爆破されたという内容。これによって列車が転覆するような事故には繋がらなかったようですが、少なくとも数時間、長ければ数日は運休です。

添えられた写真を見ると、爆破でこんな風に線路がきれいに切断されたように飛ぶのかどうか、私は線路を爆破したことがないので、ようわからん。

この写真のクレジットを見ると、「Stop the Wagons」とあります。「貨車を止めろ」。これが爆破したロシアの反戦組織か?

検索したら、地下組織なのにサイトがありました。ロシア語で「Останови вагоны」。「オスタノヴィ・ヴァゴーニィ」みたいな発音。Telegramでは「Stop the Wagons」が併記されているので、以降、「Stop the Wagons」を使います。

 

 

今までに少なくとも6件の破壊活動に成功

 

vivanon_sentenceあとで気づいたのですが、日本国内でも報道されていました。

 

2022年10月26日付「朝日新聞デジタル

 

「これは我々の犯行だ」とはっきり宣言しているわけではないですが(私が見つけられていないだけかも)、Telegramで確かに自分らがやったと読めることを書いています。この記事にあるように、英国防省が「Stop the Wagonsが今までに手がけた鉄道に対する妨害工作は6件ある」と発表したのに対して、自分らがやったのはそれだけではないとも言ってます。

sky newsが使用した写真は、犯行の翌日である25日の午前4時台にTelegramに公開されています。こんな写真をすぐさまロシア当局や鉄道会社が公開しないでしょうから、写真を撮ったのも彼ら自身である可能性が高そうです。捕まりますから、犯行を終えたらすぐに逃げた方がいいと思うな。

しかし、英国防省が指摘しているように、貨物列車は人気のないところを走ることが多いため、かつ距離が長いため、警備は困難であり、深夜の犯行だと、翌朝まで気づかれないこともありそうです。

Telegramには大量の「脱線した車輪」「脱線して横転した写真」「立ち往生した写真」がでていますが、彼らの犯行ではないものもあります。ただの事故かもしれないし、別の団体や個人の仕業かもしれないし、

彼らは列車妨害行動を呼びかけていて、「ハンマー一つで信号は壊せる」「食用油があれば脱線しやすくできる」とパルチザンになる簡単な方法を伝授しています。それに応じて行動している人々が相当数いそうですが、「Stop the Wagons」のメンバーたちも、どこまでがなんなのか完全には把握できていなそうです。

✳︎Telegramより、信号機は簡単に壊せるというメッセージ。真ん中にある矢印は、ポーランドのフェミニストたちの呼びかけによるストライキ行動Strajk Kobietのマークに似てます。人的にはつながっていないとしても、思想的にはつながっていそうです。全体主義反対。

 

 

「Stop the Wagons」の犯行現場写真集

 

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英語版ロシア語版Wikipediaには「Stop the Wagons」の項目ができていて、以下が彼らの犯行だと思わしき事例です。

 

1)6月29日、アムール州シベリア横断鉄道で脱線事故。19台の貨車が脱線(「Stop the Wagons」は14台を脱線させたと発表)。

 

 

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