松沢呉一のビバノン・ライフ

ドローンとハイマースと火炎瓶と放火と漏電と煙草でロシア全焼—相次ぐ火災と爆破-(松沢呉一)

 

ウクライナに使い捨てカイロを

 

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先月末、深夜歩いていて眠くなってきました。この日は3時間くらいで目が覚めて、それ以上寝られなかったため、夜になって強烈な睡魔がやってきて、「もう我慢できん」と公園で寝ることにしました。ホームレス対策で奥行きのないベンチしかなく、やむなく植え込みの隙間で寝ました。土の上に横になった直後に寝たぜよ。

1時間も経たないうちに目が覚めてスッキリして帰ったのですが、寒さはまるで感じず。金目のものが入っていないリュックも盗まれておらず。その頃よりもっと冷え込んでいるので、今だと風邪を引くかもしれんけど、東京では冬に道端で寝ても死にません。

でも、ウクライナで屋外に寝たら死ぬべ。家の中でも暖房がないときついべ。ガスや電気が止まっているため、ガスボンベを使っていて爆発したり、木を燃やしていて火災になったり、家の中で発電機を使って一酸化炭素中毒になったりするなど、間接的にロシアに殺された人たちが続出しているようです。

ウクライナの老人が日本から送られた使い捨てカイロをありがたがっている映像を観て、その寒さを想像して私も凍えました。

 

 

使い捨てカイロで十分な暖房になるわけはないですが、神経痛やヘルニアによる痛みや痺れを少しは和らげることができましょうし、使い捨てカイロだったら安全です。

ウクライナの火災は心が痛みますが、ロシアの火災や爆発は心が晴れやかになります。ロシア領やロシア占領地の各所で火の手があがっていて、それぞれ「ウクライナ軍によるもの」「パルチザンによるもの」「煙草の火の不始末」「ロシア軍の内部犯行(偽旗作戦か兵士の蜂起)」といった原因が考えられますが、数が増えすぎて、どこがなんなのかもうわからなくなってきてますので、ここ数日の火の手を整理しておきます。

 

 

多数の傭兵を死に追いやったプリゴジンの息子

 

vivanon_sentence中でも10日にワグネルが司令部にしていたルハーンシク地方のカディーウカ市にあるホテル「ゲストハウス・ジダノワ」がハイマースによって砲撃された件は朗報。こういうニュースばかりだとグッスリ寝られるのに。

ワグネル・グループは、直ちに生存兵を別の場所に移動させて被害の全貌をわからないようにしているようで、タス通信も破壊されたことは報じていても、被害についてはほとんど触れてませんが、18名が死亡したようです。医療体制が整っておらず(もともとなのか、これも破壊されたのかは不明)、なお重傷者が次々息を引き取っているとも言われています。

誰だって容易に想像できるように、ワグネルに雇われた囚人兵が続々脱走していて、強盗をやったり、ロシアに戻って警察と銃撃戦をやったりしていて、ロシア国民からもワグネルは迷惑がられているので、この攻撃に関しては、ロシア国民も喜んでいることでしょう。

ワグネルは8月にもルハーンシクの司令部をハイマースで砲撃されていて多大な被害を出しています。この時に司令部の位置がわかったのは、プロパガンダ・ブロガーがTelegramに投稿した写真に住所が書かれた看板が写っていたためです。小さな文字で、誰も気づかなかったのでしょうが、司令部前で写真を撮って公開すること自体がバカすぎです。自慢したかったんでしょうな。

今回はどうして場所がわかったのかというと、ワグネル・グループの代表であるプリゴジンの息子、パヴェル・プリゴジンゲストハウス・ジダノワの前で撮った記念写真を公開していたからです。位置情報をつけたままにしていたのか、ゲストハウス・ジダノワを司令部にしていることを隠していたのに、ゲストハウス・ジダノワと大書された建物の前で「ここが司令部」と書いてしまったのか、どちらか不明。どっちにしてもバカ息子。プリゴジンの息子じゃなければ即処刑でしょう。

✳︎2022年12月13日付「Daily Mail」より、ゲストハウスの壁。砲撃により半壊したこの壁の写真も公開されています。

 

 

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