松沢呉一のビバノン・ライフ

ベルゴロドの複数箇所をカミカゼ・ドローンが襲撃—ウクライナの大攻勢が始まる-(松沢呉一)

 

 

瓦礫の中のチューリップ

 

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「ビバノン」では久々のボグダンさんの動画です。

 

 

 

国際婦人祭」と言ってますが、日本では「国際女性デー」です。私にとっては旧名「国際婦人デー」の方が馴染みがあります。旧ソ連圏では、政治性やフェミニズム色は薄く、父の日、母の日、子どもの日といった記念日と同じような扱いで婦人に感謝の花やプレゼントを渡す日なんだそうです。よって「国際女性デー」とは違うニュアンスの「国際婦人祭」という日本語訳は適切かと思います。

「国際女性デー」は世界的に3月8日ですが、ボグダン・チームは数日遅れで、ハルキウのサルタフカ(Салтiвка)という街でチューリップを配布。サルタフカはウクライナ最大の住宅街で、戦争前の人口は80万人。軍の施設はないにもかかわらず、むしろないからこそ無防備で、ロシアの格好の標的となったようです。

カイロや靴下、食料、飲料などの援助物資を被弾した各地に届け、軍にも届けているボグダン・チームの活動はずっと観ているのですが、防寒のための衣服やグッズはもういらないとしても、なお各地で食料や飲料は不足していますし、停電の際の光源、熱源は必要であって、チューリップを配っている場合じゃないだろ。と思ったのですが、チューリップを受け取った人々の笑顔で、その意義がよーくわかって、激しく突き動かされるものがありました。

多くの住民は国内別地域や国外に避難していて、今もライフラインが遮断されており、砲撃も続いているため、避難した人たちがいつ戻れるのかわからない状態。瓦礫を片付け、穴の空いた壁や窓をベニアで覆っても、また破壊されるかもしれないのですが、それでも行政は清掃、復旧活動を続け、花を植え続けています。もちろん餓死寸前だったら別ですが、ある程度は救援物資が届いていて、毎日食事ができて、寒さを凌げても、未来が見えないと、人は希望を失うってことだろうと思います。

つぼみのチューリップを瓶に入れると、数日内には花が開く。こういうことが生きる希望。子どもに塗り絵や折り紙を手渡すことの意味はわかっていたつもりですが、大人も一見無駄にも思える余裕の部分がこんなにも大事だと教えられました。

戦争が終わったら復興が始まるのではなく、破壊されたらすぐに復興。

 

 

ベルゴロドへの自爆ドローンによる複数の攻撃

 

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修復した家々、瓦礫を取り除いた道路、庭に植えられた花がもう無駄にならないように、予定されている、あるいはすでに前哨戦が始まっているウクライナの大攻勢が成功して欲しいと祈るような気持ちです。

ロシア国内へのウクライナの攻撃、そして各地の蜂起はいよいよ激しくなってきています。

以下はお馴染みベルゴロドです。

 

 

国境近くであり、今までも繰り返し攻撃されていて、当初はノーコメントだったウクライナ軍も、もはや隠していません。隠しようがないと言いますか。

自爆型ドローンです。目標は監視塔(surveillance tower)となっていて、詳細がわからないのですが、軍事目的のタワーなのでしょう。

ほぼ同時に、電力施設に対しても自爆ドローンによる攻撃があって、炎上したと報じられていて、地元住民が撮ったらしき映像も公開されています。

 

 

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