松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア人が国外脱出するのは困難になってきている—国外脱出したロシア人たちの苦渋[2]-(松沢呉一)

モンゴルに取材した中京テレビのドキュメンタリーを推奨—国外脱出したロシア人たちの苦渋[1]」の続きです。

 

 

義勇軍に参加しようとしたロシア人が逮捕された

 

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1週間くらい前、ロシアの独立系メディア「メデューザ」に、「おっ」と思わせる記事が出てました。「メデューザ」は古い記事が数日で読めなくなるので(たぶん金を出せば読める)、その記事ももう読めず、検索してもそれについて書かれた「メデューザ」以外の記事が見つからないので、記憶で書きます(よって細部は間違っているかもしれない)。

戦争に反対するロシア人が、ウクライナ軍による義勇軍の呼びかけをインターネットで見て、それに呼応して、ウクライナに向かうことを決意します。

ロシアから直接ウクライナに正規で入ることはできないため、まずロシアが支配するウクライナのドンバス地方に入ります。そこから、やはりロシアが支配するジョージアの南オセチア(Хуссар Ирыстон)へ。

位置関係。

 

 

ロシアからすると、すべてロシア国内の移動ですから、ここまではパスポートもビザも不要のはず。

そこからロシアの力が及ばないジョージアの別地域に移動し、ウクライナに入るつもりだったのだと思われるのですが、南オセチアで逮捕されました。義勇軍に参加となると、国家反逆罪になり、懲役10年から15年になるとのこと(ここも記憶なので正確ではない)。

どういうきっかけで捕まったのかまでは書かれていなかったですが、南オセチアから出る時には検問所を通らなければならず、その際に怪しまれて尋問されたか、南オセチアにわざわざ来てフラフラしていることで怪しまれて、警官にスマホを見られたのではなかろうか。反戦行動で拘束された人々もスマホを調べられると証言していたので、警察の常套手段です。履歴を消しておかないと、義勇軍募集のページを見ていたことがばれます。

 

 

徴兵メールが届いたら逃げることは困難に

 

vivanon_sentenceこの彼は徴兵されたわけではないと思いますが、この調子ですから、徴兵逃れで国外に出ることは限りなく難しくなってます。

今までは出頭命令の通知が届いても、「見てない」と言い張って、国外に出ることができましたが、先月、徴兵法が改正されて、メールで通知することができるようになり、本当に見ていなかったとしても、「見てない」との言い分が成立しなくなりました。

メールを送った段階で「本人に伝えた」ということになり、出国手続きの際に、メールを送っていることがすぐに確認できるようになったため、その段階で逮捕されます。最長懲役10年。

そこで、出頭命令が来る前に出国したがる人たちが出てきているようですが、ロシア人の入国を制限する国が増えて、中にはロシア人留学生や労働者の受け入れを一切禁止した国もあります。今も受け入れている近隣の国は、すでに飽和しているため、入国後、住む場所を探すことも、仕事を探すことも難しく、ヨーロッパ以外に移住するしかなくなってきています。

 

 

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