松沢呉一のビバノン・ライフ

ベラルーシと国境を接するポーランドとリトアニアが緊張状態に—「プリゴジンの乱」の余波-(松沢呉一)

プリゴジンは生きているみたい—叛乱には失敗したが、ロシア社会に与えた影響は大きい」の続きです。

 

 

ロシアのスロヴィキン航空宇宙軍総司令官拘束から大粛清が始まるか

 

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相変わらず、「プリゴジンの乱」とはいったいなんだったのか、プリゴジンはこれからどうなるのかという話題が続いています。「プリコジンは殺された」という説も流れる中、「ルカシェンコはプリゴジンを生かしておいて利用するはず」と私は思っていたわけですが、これについてはその通りになってます。ルカシェンコは、プリゴジンとプーチンのどちらとも連絡をとってプリゴジンの計画を阻止した経緯を雄弁に語ってプーチンに恩を売っており、今後もこのスタンスをとりそうです。

プリゴジンが発作的に起こした事件のように見えながら、数カ月前から計画は始まっていたとの説も出てきていますし、クレムリン内に情報提供者や支持者を得ていて、連携して蜂起する予定だったという説も一部では根強い。

どこまでどうかは置くとして、内通者がいたことは間違いなさそうで、誰が内通していたのかをプーチンは洗い出そうとしているようです。

27日の段階で、セルゲイ・スロヴィキン(Серге́й Влади́мирович Сурови́кин)ロシア航空宇宙軍総司令官の名前が上がっていました。事前に計画を知っていたという程度の疑いですが、米国の諜報機関も数日前には知っていたと言われているので、拘束されたということは、それ以上の関与を疑わせます。

ペスコフ報道官はこれを否定していましたが、一昨日、独立系の「モスクワ・タイムス」がセルゲイ・スロヴィキンが拘束されたと報じています。ともに副司令官も逮捕されたとの情報が出ていますが、確定情報ではありません。

スロヴィキンは昨年後半はウクライナ侵攻の総司令官で、1月には副司令官に降格されていますが、ロシア政府軍の最重要ポストにいる将軍の一人であり、それがプリコジンと通じていたとあっては、ロシア国内、政府軍内の動揺は計り知れない。西側も情報を流してロシアの混乱を強めようと図っているでしょうから、情報は慎重に見た方がよさそうですが、ロシアでは戦々恐々とした日々が続きます。粛清が拡大する可能性もあるし、軍部の粛清は、ただでさえ将校が不足しているロシア軍を弱体化させるので、ここはセーブしそうでもあって、どっちに転ぶか眺めているのは楽しいなと。

※2023年6月27日付「The New York Times」 スロヴィキンが関与を疑われていることを報じる記事

 

 

バルト三国を支配したソ連の歴史をロシア人たちはどうとらえているか

 

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ロシア軍やクレムリンがボロボロになっていくのは楽しいですが、それだけでは済みません。これをきっかけにして、反戦派の国民が蜂起すること、少数民族の独立派が蜂起することをプーチンは恐れているはずで、ここを徹底的に潰してくることはデフォルトですが、今のところ、両者ともにはっきりとした動きは見られません。

また、ブリゴジンとワグネルの一部を引き取ったベラルーシが、彼らを今後どう処するのかに注目せざるを得ない国々もあって、ポーランドは急遽国境近くに軍を配備しています。この情報も「モスクワ・タイムス」で知りましたが、FRANCE24も報じています。

 

 

ベラルーシと国境を接するポーランドとリトアニアが緊張状態にあります。バルト三国はウクライナを全面支援しており、在庫のほとんどをウクライナに提供しているため、自国の防衛には軍備が足りず、NATO加盟国の義務としてドイツがリトアニアに軍を送ると言ってます。

 

 

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