松沢呉一のビバノン・ライフ

プリゴジンは生きているみたい—叛乱には失敗したが、ロシア社会に与えた影響は大きい-(松沢呉一)

プリゴジンの蜂起は一日で終了—いったい何があったのか」の続きです。

 

 

プリゴジンの行方

 

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ロストフを離れてから、ワグネルの幹部もプリゴジンと連絡がとれない状態が続いていて、ベラルーシに入ったことの確認もとれていないため、すでに殺されたのではないかとの説も出てます。

 

 

今なお発言力を持つプリゴジンを幽閉して、その力を削ぐくらいのことはあるとしても、また、ワグネルを完全に解体して、落ち着きを取り戻した段階で殺すことはあり得ても、すぐに殺すのは、危険すぎます。

今回のことでプーチンは恐怖のあまり、見境なく強行な対策をとってくる可能性もゼロではないですから、すでに暗殺されていることを完全否定することはできないながら、ルカシェンコはプリゴジンを生かしておいた方が利用価値があると計算するはずなので、プーチンの暗殺を避けるためにプリゴジンの居場所をわからなくしているという説の方がありそうです。

 

 

プリゴジンの最新メッセージが公開された

 

vivanon_sentenceそう思っていたのですが、ついさきほど、プリゴジンから11分のメッセージが公開されたとのことです。その元の音声は聴いてないですが、各局これを取り上げています。

 

 

プリゴジンとしては、今回、政変を起こそうとしたのではなくて、対ウクライナの戦争のやり方に不満があったのと、ワグネル部隊をロシア軍に組み込むロシア政府のやり方への抗議を示したかったとのことです。プリゴジンによると、ワグネル軍でロシア軍に入ることを望むのは1パーセントから2パーセント。ワグネル軍は2万人程度のようなので、数百人ということです。

その目的が果たせたので、あっさり撤退したとも言えますし、この発言は事を小さく見せたいプーチンの意向が反映されているのかもしれない。

ロシア政府の方針としては、「叛乱に参加したワグネルの兵士は罰しない。参加しなかったワグネルの兵士はロシア軍に組み込むべく登録を進める」となっていて、参加した兵士はロシア軍には入れないということです、当然と言えば当然で、内部からの叛乱を生み出しかねないので、みすみす不満分子をロシア軍が抱え込むような危険は避けたい。

さらにルカシェンコを介したプーチンとプリゴジンの交渉の中で、ワグネル兵をロシア軍に組み込むことは撤回されたかもしれない。結果を見ると、プーチンがプリゴジンを抑えたってことですから、プーチンの勝利ってことですが、そのためにはプーチンも十分な妥協をしているはずです。

発表されたのは音声だけのようで、今まで映像つきでメッセージを出してきたプリゴジンとしては異例です。居場所をわからなくするためでしょうが、拷問されて顔中傷だらけであることを悟られたくなかったのではないかとも想像したりします。

その辺の真偽はこれから明らかになるかもしれないし、ならないかもしれないですが、私ごときがいくら論じても真実には迫れそうにないので無視するとして、数ヶ月後に暗殺することはあるとしても、すぐにプーチンがプリゴジンを殺すことは考えにくい事情をまとめてあったので、以下、それを出しておきます。

 

 

ブリゴジンを支持する人々が路上に出たことの衝撃

 

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ロストフの市民たちが熱狂的にワグネルを歓迎し、ベラルーシに向かうプリゴジンを送り出す映像は、クレムリンに大きな衝撃を与えたでしょう。

ロシアの中でプリゴジン人気が上昇しつつあるとの話は以前から出てましたが、まさかここまでとは私も思いませんでした。ロストフ市民の中でもわざわざ路上に出てワグネルに声援を送るのは、数百といった単位に過ぎないかとは思いますが、少数ではあれ熱心な支持者がいるのですし、その背後には数千から数万のプリゴジン派が存在していることを示唆します。反戦派も主戦派もどっちもいるでしょうが、どちらにしてもプーチン体制にとっては脅威です、

また、プリゴジンを支持するか否かとはまた別の意味合いですが、プリゴジンの影響が着々浸透していることを私は感じていました。ずっと観ている「ロシア人にインタビューしてみました」から読み取れるのです。そのことを確認しておきます。

 

 

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