松沢呉一のビバノン・ライフ

鈴木邦男の教え「謝った人を深追いしてはならない」—謝罪すれば済むことなのに謝罪できずに傷を深めるのはなぜか[補足編3]-(松沢呉一)

謝罪すれば済むことなのに謝罪できずに傷を深めるのはなぜか」の「補足編」です。

 

 

本年亡くなった人

 

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前回書いたように、面識のない著名人の死について触れることには自分なりのルールがあって、たとえば物書きであれば著書を何冊か読んでいて、それについて書いたことがあったり、ミャージシャンであればCDを何度か買ったことがあって、それについて書いたことがあったりしない限り、触れないことの方がずっと多いのですが、知人が亡くなると、多くの場合、追悼文代わりに思い出を書きます。追悼の意味だけでなく、自分の中にその人物をくっきり位置づけて残しておくためです。

知人であっても、書き残すほどの思い出がなくて、そうこうするうち、タイミングを逸することがあります。SNSをやっていればそこに短文を書いて済ませられるのですが、すっかりやらなくなってますし。

ミリオン出版の編集者で、「実話ナックルズ」の編集長だった時期もある中園努がそうでした。編集部に行けばダベってましたが、直接仕事をしたことはさほどない。あっても込み入った内容ではなく、原稿を送っておしまい。

その程度の関係だったので、ミリオン出版のあとどうしているのか知らなかったのですが、1ヶ月ちょっと前に亡くなるまで静岡県に住んで道路公団で働いていて、その仕事中に車に跳ねられたと聞きました。

静岡県には現在の妻の実家があって、妻とはオンラインゲーム「人狼」で知り合ったらしい。ここは興味を惹かれたのですが、人に聞いた話なので正確ではなく、この辺にしておきます。

それとは逆に書くべきことが多すぎて、書き始めたはいいものの、まとめられなかった人物もいます。1月に亡くなった鈴木邦男がそうでした(原稿ではいつも「著名人呼び捨て法則」で敬称なしだったので、ここでもそうします)。

知り合ったのは今から30年くらい前になります。以来、さまざまなところで顔を合わせていて、じっくり話しあったことも何度かあります。多作でしたが、ある段階まではすべての著書を読んでましたし、一水会の機関紙「レコンキスタ」も購読してました。

最後に会ったのは10年以上前になるので、死の生々しさはなかったのですが、それでも次々と思い出されることがあって、また、未だにどう考えていいのかわからない点もあって、まとめきれませんでした。

中園努アカウントの最後のツイート

 

 

忘れられない鈴木邦男の教え

 

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未完成になった追悼文では、覚えている鈴木邦男の言葉を書き連ねていたのですが、そのひとつに、「謝った人を深追いしてはいけない」というものがあります。直接本人の口から聞いてますし、著書にも書いていたはずです。ここではそこだけを切り取って語ります。

「間違いを認めて謝ったら、そこまでにすべきである。間違いを認めたことで相手を深追いする人がいるから、間違いを認められなくなるのだ」と鈴木邦男は言ってました。

間違いをやった側から見ると、「間違ったと思ったら謝れ」ということでもあります。スムーズにそれができるようにするために、「深追いしてはいけない」という教えがくっついてくるのだと私は受け取りました。謝ると損をするんだったら、誰も謝らなくなってしまって、議論が前に進まなくなります。

議論を厭わなかった鈴木邦男らしい姿勢だと思います。

つねに実践できるわけではないですが、「間違いがあったら認めて謝罪する」「謝った人を深追いしない」というふたつの教えは、私自身、心がけるようにしています。

謝罪した増田かおる松戸市議を後追いしましたが、あの件はあれで終わり。戸定梨香の件は逃げまわっているので、謝罪をするか、公開質問状に答えるまで叩き続けます。

鹿砦社から出ている(出ていた)鈴木邦男と一水会関連の出版物一覧 鈴木邦男は、意見をぶつけあうことを厭わない人のはずなのに、「A君リンチ事件」についての立場の表明を鹿砦社から求められながら、回答をしなかったため、鹿砦社は絶縁。鈴木邦男らしくないと思ってましたが、今になってみると、肉体的な不調によって、精神的にも疲れていたのかもしれないと思います。

 

 

表紙の批判を版元ではなく、対談に登場した人に向ける愚かさ

 

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条件はつくにせよ、「間違いがあったら認めて謝罪する」「謝った人を深追いしない」というふたつの教えに反対する人たちはあまりいないでしょう。

と私は思っていたのですが、仁藤夢乃やその周辺の人たち、全国フェミニスト議員連盟の人たちや埼玉の共産党県議たちを見ていると、まるで話が通用しそうにない。仁藤夢乃やその周辺の人たちについては、「噓をついてはいけない」「事実を重んじるべし」という考えさえも理解してもらえそうにありません。

 

 

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