松沢呉一のビバノン・ライフ

北欧を手本にしたがる人たちはポルノ解禁を求めるのが筋—ドキュメンタリー映画で語った日本の風俗産業[補足編1]-(松沢呉一)

ドキュメンタリー映画で語った日本の風俗産業」の「補足編」です。

 

 

北欧を手本にしたがる人たちがポルノ解禁を求めない矛盾

 

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前回までがインタビューで語った内容です。

私のようなことを言っている人は他に知らないので、トンチンカンなことを言っている可能性もありながら、私としてはこのジャンルについて腰を据えて頭を使う人がいないだけではないかとも思います。

一切の破綻なく完璧に説明できているとは言わないし、私とは違うアプローチもあるでしょうが、世界各国で、通勤時間、労働時間、特定パートナーとのセックス回数と会話時間のデータを集められれば、我が論に合致する部分が出てくると想像します。また、「特定パートナーとの間で、こだま夫婦のような事態が生起した時にどうやって解決するか」というアンケートをとっても意味ある回答が得られるはずです。

このシリーズの冒頭で、スペインと日本が性風俗産業が大きいという古いデータを紹介しましたが、先進国で性産業がもっとも小さいエリアは北欧です。これについては世界各国を回った大宅壮一も書いていたはずです。

その理由は簡単で、キリスト教的禁忌が薄く、性については伝統的に解放的なためです。これらの国で行われる夏至祭で、スウェーデンでは夏至祭にコンドームを携帯するように政府が推奨しているくらいにオーブン。フリーセックス祭り。世界で初めてポルノを解禁したのはデンマーク、ポルノ大国として名を馳せたのはスウェーデン。性を抑圧しない社会では、セックスをするハードルが低いため、金を払わずともセックスができてしまいます。そのくせ、「レイプ大国」と言われていますが、他国とカウント方法が違うため、なんとも言えず

売買春のマーケットが小さい国だから、買春者処罰のようなことをやっても全体に支障が起きにくかったのではないかとも思えます。セックスワーカーたちにとってはいいことは何もなかったわけですけどね。

よって、キリスト教道徳団体がスウェーデンを真似るのは間違っていて、まず自分らの道徳を疑うべきです。ヤリマン、ヤリチンを礼賛し、昔のように盆踊りを無礼講にし、夜這い文化を復活させ、ポルノを解禁すべきなのです。そうすると、売買春は衰退するかもしれない。

つっても国の事情が違うので、衰退しないと思いますけどね。北欧の労働時間と通勤時間を調べても確実に意味のある数字が出るはずです。

しかし、それらの国でも売買春はゼロにはならないのは何故なのかも考える必要があります。

※平和になった新宿区役所前

 

 

売り専は北原みのりのために生まれたのではない

 

vivanon_sentence身体障害者で性風俗を利用するのがよくいます、詳しくは「スカーレットロード」シリーズを読んでください。乙武洋匡のようなヤリチンもいますが、稀な例です。一生結婚しない率は健常者よりも高く、性的機会も少ない、ここには明らかに不平等があります。その穴埋めをしているのが性風俗です。

「スカーレットロード」シリーズに書いたかもしれないですが、だからと言って、障害者を例にして、性風俗全体を肯定するのは居心地の悪さがあります。彼らを利用しているようで。

身体障害というと範囲が限定されますけど、精神的な障害のある人も同じ。鬱病により半年に一回は一ヶ月間家から出られなくなるので、社員にはなれず、30代になってもバイトを転々としている人は、金もないので、パートナーを見つけにくい。鬱期以外は元気なので、売り専で働いているのもいます。働く側として、また、客側として性風俗に助けられています。

これは女子も同じで、1ヶ月休んでも復帰が容易なので、鬱病の風俗嬢を探すのは難しくなくて、私が仲良くしていた風俗嬢でもいますし、鬱を併発した解離性同一性障害もいました

さらに範囲を広げるなら、「時間がない」「妻のマンコに入らない」といった人たちもセックスの機会を奪われていますから、その一点において弱者とすることも可能です。金を持っていても、地位があっても、です。

 

 

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