2019年6月から半年で10人のセックスワーカーが殺害された—仁藤夢乃の発言は信用できない[資料編11]-(松沢呉一)
「移民が移民を襲撃し、殺害するブローニュの森—仁藤夢乃の発言は信用できない[資料編10]」の続きです。
アイシャイアという名のブルガリア人街娼が殺された
以下のFRANCE24の映像はヴァネサ・カンポスが殺害される前年、2017年のものです。
50代のブルガリア人が7ヶ所刺されて死んでいるところが見つかったと言っています。検索すると、2017年6月に、アイシャイア(Ayshaia)という街娼がブローニュの森で殺されたと出てます。それから間もない頃にこの映像は撮影されているので、「つい最近」という話だったのでしょう。
しかし、アイシャイアの死はヴァネサ・カンポスが殺されたことを報じる記事の中でしか見られず、殺された直後には報じられていないようです。街娼たちが知っていただけです。警察はロクに捜査もせず、犯人は捕まっていないのではないか。だから、街娼たちは自衛をし、社会に向けてのアピールを始めています。
アイシャイアの詳細は不明ですが、ソ連崩壊以降、ドイツやオランダなどの売春合法の国では、東ヨーロッパからの出稼ぎが増えたという話がかつて報じられていて、その頃にフランスにやってきて、50代までブローニュの森に立ち続けて殺された可能性もありそうです。
チャルガのおかげで、ブルガリア人の女性名はいっぱい知ってますが、アイシャイアという名前はブルガリアっぽくない。これも検索してみたら、約5億年前のカンブリア紀に生息した葉足動物アイシェアイア(Aysheaia)から来たニックネームだと思われます。使っているうちにアイシェアイアからアイシャイアに変化したのでしょう。
アイシェアイアという学名は由来が不明とのこと。移民のセックスワーカーには相応しい名前か。
Wikipediaよりアイシュアイアの復元図
ヴァネサ・カンポスか?
ペルー人街娼自体、そう多くはないはずなので、この映像に出てくるペルー人たちとヴァネサ・カンポスは同じグループにいた可能性が高い。
冒頭に出てくるペルー人は、HIVに感染し、治療費が払えなくなり、医療制度が充実しているフランスに来て、気づいたら街娼をやっていたと言っています。先進国では感染拡大を防ぐために、HIVの治療は無料になってる国が多いですから。国に帰ると死ぬしかないですが、これを難民として認めると、感染者が多数やってくることになります。悩ましい。
こういう人たちもコンドームをつけにくくなってしまったのです。だから、フランスの医師会など、医療関係の団体は買春者処罰に反対しています。
顔は見えないですが、1分50秒あたりから、冒頭のペルー人とは違う人物が登場します。下半身は下着と網タイツだけ。スタンガンを光らせ、スペイン語で強い口調で話しています。ナレーターはヴァネサという名前を出しています。セカンドネームは違いますし、ヴァネサはそれほど珍しい名前ではないので、たまたま同じ名前なのかもしれないですが、本名の姓を隠すくらいのことはするでしょう。
そのあと、ラテンアメリカ出身の街娼たちの集まりの様子がとらえられています。スペイン語の国が多いので、ラテンアメリカ移民はまだしもつながれる。誰かが呼びかけて開かれたものでしょう。Acceptess-Tか。だとすると、あの集まりの中にもヴァネサがいるかもしれない(この集まりで話をしている人はまた声が違う)。
殺されるトランスジェンダーのセックスワーカーたち
ヴァネサ・カンポスが殺害されたあとの報道では、トランスジェンダーではなく、女装の男と報じられていました。警察発表がそうなっていたのでしょう(各メディアは指摘を受けて訂正記事を出しています)。
ドキュメンタリー「Les secrets du bois de Boulogne」に出てきたサマンサだったら、警官たちとも顔馴染みだったろうと思います。警察としても、街娼たちからの情報を得たい。「指名手配されている殺人犯を見かけなかったか」「ギャング団の様子はどうか」など。サマンサがトランスジェンダーであることも聞いていたでしょう。
ヴァネサ・カンポスが女装者であると報じられたのは、警察とそういったコミュニケーションまではなかったことを示唆していそうです。
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