松沢呉一のビバノン・ライフ

表現の自由を危うくしかねない論調—煉獄コロアキ(杉田一明)の逮捕で引っかかる点[後編]-(松沢呉一)

目的は金か、正義の実現か、自己顕示か—煉獄コロアキ(杉田一明)の逮捕で引っかかる点[前編]」の続きです。

 

 

「オレならもっとうまくやる」と思った人間が確実にいるはず

 

vivanon_sentence前回見たように、金が煉獄コロアキの動機の一つになっているのは事実としても、それ以上に彼を突き動かしているのは目立ちたい、有名になりたいとの欲求であるように見えます。

例えばこれ。

 

 

痛い。

統一教会本部前での公然わいせつ事件の後ですけど、知る人ぞ知る存在であっても、誰もが知る存在ではあり得ない。逮捕されたことを自分の勲章のようにひけらかすことも痛いし、あたかも誰でも知っている存在であるかのように自分を扱っているのも痛い。借金一億は怪しいと思うなあ。

 

 

頭悪そう。

彼が多額な収入、また借金があるようにアピールするのも、自己顕示のためでしょう。それを検証せずに「金のためだ」と報道したことで、「そっか、あんなヤツでも金になるのなら、もっと逮捕されないようにうまくやればいい」と考えた人は少なくないはずです。

 

 

他の私人逮捕YouTuber、世直し系YouTuberに拡大していきそう

 

vivanon_sentence通常、名誉毀損事案のほとんどは民事裁判で賠償請求して終わりです。弁護士費用がかかりますが、今回の場合は現場で犯罪者扱いをしたことと、その様子をモザイクせずに晒したことの立証は容易ですし、肖像権侵害も確実です。相当に悪質なので、弁護士費用は十分に賄えましょう。

それでは気が済まないし、金を払えばいいんだろうとばかりに今後も活動を続けて被害者を増やすべきではないと判断したのかもしれないですが、これで静かになるようなタマではないでしょう。被害者は、刑事の結論が出てから、民事を提訴するつもりかもしれないですが、警察が被害届を出すように促したパターンか。

警察としては、私人逮捕系YouTuberたちの誤認による暴行などの犯罪を取り締まるのは当然として、彼らはしばしば「警察がやらないから自分たちがやる」といったように、警察があたかも職務を怠っているかのように言い募りたがりますし、私人逮捕しても、証拠がないとして釈放するケースに対しても文句を言ってますから、警察の報復の意味合いもありそう。

投稿された映像だけで十分立件できるのではないかとも思いますが、家宅捜査もやっています。動画編集はパソコンでしょうから、家宅捜査をして、パソコンを押収して、編集前の動画まで確認する必要があったのかもしれないですが、交流関係を探り、どの程度の金が動いているのかまで把握したかったのではなかろうか。

煉獄コロアキは、ガッツch.新宿109などの世直し系YouTuberとともに行動しているので、今後、それらのYouTuberたちを一網打尽にする腹づもりかもしれない。

その辺の目論みはともあれ、被害者がいて、被害届を出したのですから、警察が動くのは当然ですし、迷惑YouTuberの話題が増えているため、テレビ各局が報道する価値があると判断したのは理解できますが、名誉毀損事件で、マスコミを呼んで逮捕シーンを撮影してテレビ各局が繰り返し流すのは異例でしょう。著名人と言えるほど知られている存在でもなく。

この扱いが一定の抑止力になるとしても、へずまりゅうや煉獄コロアキらのようなタイプには通用せず、むしろ彼らにとっては自己顕示欲を満たすものであり、少数であれ、類似した人々をYouTuberとして世に放つことになりかねないと危惧します。

✳︎煉獄コロアキのXより11月12日付の投稿。YouTubeで多額の収入を得ているならホストクラブで働かなくてもいいような。自分の知名度を確認したいといった理由かもしれないけれど。

 

 

高橋裕樹弁護士の指摘

 

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ここまで私が書いてきたこととはつながりつつも違う論点で、高橋裕樹弁護士が煉獄コロアキ逮捕の問題点について解説しています。大事な視点です。

 

 

 

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