松沢呉一のビバノン・ライフ

フィンランドがロシアとの国境にある検問所を閉鎖—国外脱出したロシア人たちの苦渋[21]-(松沢呉一)

 

 

フィンランドがロシアの国境検問所 を閉鎖

 

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ひさびさの「国外脱出したロシア人たちの苦渋」シリーズです。つっても、直接には脱国ロシア人とは関係ないのですが、間接的には関係してきそうです。

パレスチナについては触れにくいのですが、パレスチナからの難民が増加していることが気がかりです。周辺にはシリアやイラクのように、多数の難民を国外に送り出している国があって、それらの国々に逃げることはできず、それ以外の国も飽和してますから、これ以上は受け入れられず、流入してこないように国境警備を強化しているはず。

となると、キプロスやトルコを目指して海を渡ることになるかもしれず、またも海の藻屑になるのが続出しそうです。今の状況では、パレスチナから脱出した人々は難民として認められやすいでしょうが、キプロスやトルコのみならず、ヨーロッパ各国も難民受け入れに消極的になっていますから、そもそも入国さえ難しくなっています。

それと直接は関係ないと思いますが、意外なところでパレスチナの名前を見ました。

11月16日、フィンランドのペッテリ・オルポ首相がロシアとの国境にある9カ所の検問所のうち南部に位置する4カ所を来年2月18日まで閉鎖することを発表。この数日前、亡命希望者が複数の国境検問所に殺到し、一時的に閉鎖するしかなくなったのを踏まえての措置です。

フィンランド国外の報道を先に読んだので、それ以上は詳しい事情がわからず、てっきり私はプーチン政権や戦争に批判的なロシア人亡命者が殺到したのだと思いました。

✳︎11月17日付「REUTERS」 この記事では詳細がわからず。しかし、あとで検索して見たら、同日の国外メディアでも、より詳しいことが書かれているものはありました。

 

 

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がフィンランドを全面支持

 

vivanon_sentence欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「ロシアによる移民の手段化は恥ずべきことだ。私はフィンランドの措置を全面的に支持する。そして、ヨーロッパの国境を守るフィンランド国境警備隊に感謝する」とXに投稿しています。

 

 

若い世代を中心に、ロシア国民が大量に脱出していることに頭を悩ませ、国外に出ることを制限し始めたと報じられていたのに、どういうことだろう。もしロシア人の亡命希望者を締め出すのだったら、欧州委員会の委員長が全面的に支持するだろうかと訝ってフィンランドの報道を読んだら、フィンランドに殺到しているのはロシア人ではありませんでした。

 

 

他国もフィンランドに追従の動き

 

vivanon_sentenceフィンランド政府は入国しようとした人々の国籍を発表していないのですが、パレスチナ、ソマリア、シリア出身だと国境警備隊は言ってます。しかし、彼らはパスポートを所有しておらず、申告した国籍は虚偽である可能性があります。実際の国籍もある程度はわかっているでしょうが、今のところ発表はないようです。

取り調べの結果を踏まえて、「NATOに加盟したため、ロシアは計画的に国内の違法滞在者を拘束して送り込んでいる」とフィンランド政府は発表します。つまりは嫌がらせです。

 

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