松沢呉一のビバノン・ライフ

改めて売掛禁止の難しさと無効性を確認する—ホストクラブ規制を求める人々の薄っぺらさ[前編]-(松沢呉一)

 

 

詐欺師から金を受け取るのも犯罪

 

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頂き女子りりちゃんこと渡邊真衣被告が詐欺で稼いだ金をホストに使っていて、先月、そのホストが逮捕されたというので、「えーっ! 詐欺で得た金であることを知っていた場合、返済を求められるのはいいとして、詐欺に加担していたわけでもないのに捕まるのはおかしくね?」と思ったのですが、VTuberの配信を観ていた方が楽しいので、そのままにしてしまいました。

改めて調べたら、ホストは組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)違反容疑でした。聞いたことのない法律。

ざっとまとめると、組織に属する者による犯罪を重く罰し、犯罪による収益の没収をスムーズにし、金を使う先までを処罰することで犯罪を抑制する法律です。前提にあるのは、組織的に為される特殊詐欺の増加でしょう。指定暴力団であれば暴対法を適用できますが、昨今の特殊詐欺は暴力団が関与していないものもあるので、それをカバーする法律かと思います。

渡辺真衣被告もホストも犯罪組織の構成員ではないですが、この法律名の後半「犯罪収益の規制等」については、組織による犯罪という制限がついていないため、渡邊真衣容疑者が詐欺によって得たことを知って彼女からの金を得たら、誰でも該当します。

 

犯罪収益等収受
第十一条
情を知って、犯罪収益等を収受した者は、七年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。

 

「犯罪組織による収益等」ではなく、「犯罪収益等」としたのは納得しやすい。金を持った人が詐欺で儲けたことまで知ることがあるとして、それが組織によるものか否かまで聞いて、組織だったら断り、個人だったら受け取るなんてことをやる人はおらず、組織であることの要件を理解している人もおらず、その線引きには意味がない。

しかし、そうなると、万引きしたお菓子を友だちで分けあっただけで、全員逮捕。とはならなくて、犯罪の範囲が第二条で定められていて、その筆頭に死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」とあります。詐欺罪は「十年以下の懲役」なので、これに該当。

改めてまとめるかもしれないですが、警察は、若者メンタルサポート協会小杉沙織代表がカンパ詐欺をやったと見なす可能性が高い。彼女がやったことはネットで拡散されているので、カンパ詐欺であることは察知でき、カンパからの金を第三者が受け取ったら、この法律に抵触するかも。

✳︎2023年11月10日付「読売新聞」 渡邊真衣容疑者が追起訴されたことを報じる記事。今回の被害金額は一人から1億3千万円。あの小娘にそんな金を出すのはバカじゃなかろか思わないではいられない。その金をホストに注ぎ込んだ渡邊真衣容疑者のバカさは言うに及ばず。

 

 

法規制の可能性

 

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渡辺真衣被告の件だけじゃなく、ホストがらみの話題が続いており、ここ数日は、あやなんセカンド・パートナーと称していた浮気相手がホストで、ホストになる前の悪事が発覚しています。

そもそも私は東海オンエアの名前くらいは薄ぼんやりと認識していても、それ以上はまったく知らず、あやなんとやらも、今回の騒動で初めて知ったのですが、あれだけ堂々とホストをセカンド・パートナーと紹介するくらいにホストが浸透したとも言えます。

前に書いたように、2000年代に入ってホストクラブは激増しており、ホストの数も客も激増しているのだから、その中にはとんでもないホストもいて、とんでもない客もいて、トラブルが増えるのは当然かと思いますが、大多数の客は問題なく楽しんでいましょう。

その一部の例を取り上げて、ホストクラブの規制を求める声が出ていますが、効果がないだけでなく、国民の生活を不自由にしかねない法律を作って自分の手柄にしたがるアホな政治家や利権のニオイを嗅ぎつけるハイエナ団体が蠢いていそうです。

 

 

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