松沢呉一のビバノン・ライフ

自転車に乗れない韓国人は珍しくない—韓国でたびたび起きる「後進国型事故」[追記編5]-(松沢呉一)

エスカレーター逆走事故が日本の数倍起きている—韓国でたびたび起きる「後進国型事故」[追記編4]」の続きです。

 

 

自転車が行き交う風景に日本らしさを感じる韓国人

 

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そんなに読んだ方はおられないですが、「韓国でたびたび起きる「後進国型事故」」シリーズは、当初予想していなかったことが次々にわかってきて、書いている私にとっては大変面白いです。話が飛びつつ、さらに続けます。

相変わらず、韓国人YouTuberや在韓日本人YouTuberをよく見ているのですが、先日さんぷんちゃんがこんな動画を出してました。

 

 

さんぷんちゃんは前に取り上げたことがあったと思ったのですが、検索しても出てこないので簡単に説明しておくと、日本に3年以上住んでいる韓国人です。昨年までは韓国語を教え仕事をしていたのですが、今はYouTubeだけのよう。

観光客が行きたがる渋谷や原宿、銀座、浅草ではなく、赤羽のような街が彼は好きです。この動画も板橋駅近くの北区です。駅の反対側には商店街があり、銭湯もあるので、そっちは私もわかるのですが、反対側はよく知らない。さんぷんちゃんの動画が好きなのはここです。知らない場所を見せてくれます。

この辺に住んでいるのかどうかわからないですが、吉祥寺のハモニカ横丁にもたびたび行ってますから、単に近場に行っているわけではありません。吉祥寺には井の頭公園もあるし、おしゃれな店や文化的なスポットがいっぱいあって、そういうところにも行っているかもしれないですが、動画に出てくるのはハモニカ横丁だけ。

古い飲み屋街や商店街が好きなら、下町も好きだと思うところですが、観光化された浅草や谷中、柴又には興味が向かないようです。

彼がカラオケで歌うのは古い演歌だったりします。赤羽の飲み屋にピッタリ。変わったヤツだなと思っていたのですが、これは日本が好きな韓国人の一典型だとわかってきます。これについてはまた改めて。

 

 

日本で初めて自転車に乗る

 

vivanon_sentence童顔ですが、さんぷんちゃんは30歳だったかな。子どもの頃に、補助輪がついた自転車(スタッフは三輪車と言ってますが、子ども用の補助輪つき自転車だと思います)に乗ったっきりで、今回初めて大人の自転車に挑戦。大人になるまで自転車に乗れない日本人は稀ですが、韓国では普通のことです。

日本の自転車台数は6870万台、韓国は1000万台。日本ではたいていの家庭に自転車があるのに対して、韓国では自転車のない家庭の方が多い。

自転車は大きくふたつの用途があります。ひとつはスポーツやレジャー用です。ロードレーサーで遠くまでツーリングしたり、マウンテンバイクで野山を駆けたり。もうひとつは交通用や運搬用です。ママチャリや通勤・通学用自転車が典型。

日本では後者の利用が圧倒的に多いですが、韓国では「ちょっとそこまで買い物に」や「学校に行くには自転車が便利」という利用はあまりないらしい。

さんぷんちゃんの好きな日本は古い飲み屋街や商店街ですけど、「自転車が走る街並みや田園風景」を好む韓国人もよくいます。以前は「これのどこがいいんだ?」と訝ったのですが、虫捕りに行く小学生、下校中の中学生、買い物帰りのおばちゃん、パトロール中の警察官が自転車で行き交う光景はアニメなどの映像でしか観たことがないのです。踏切が近くにあれば完璧。路面電車も完璧。

 

 

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