吉本興業の方向転換と人間の欲望分類—「女性セレクト指示書」で理解する松本人志[付録編]-(松沢呉一)
「何人の芸人がテレビから消えるか—「女性セレクト指示書」で理解する松本人志[前編]」の続きです。
吉本興業がまさかの方向転換
しばらく、松本人志については触れることはないだろうと思っていたのですが、前回を公開したあと、吉本興業は「週刊誌報道等に対する当社の対応方針について」を公開。
この文書で吉本興業は、ガバナンス委員会とやらの発言としつつも、「週刊文春」が出てすぐ「当該事実は一切ない」としたことの間違いを認めています。
現在、当社におきましては、コンプライアンスアドバイザーの助言などを受けながら、外部弁護士を交えて当事者を含む関係者に聞き取り調査を行い、事実確認を進めているところです。
つまり、「当該事実は一切ない」とした最初のコメントの段階では、聞き取りも事実確認もしていなかったことを告白しています。誰もが思っていた通り。改めて、聞き取りや事実確認をしてみたら、「当該事実は一切ない」とは言えないことが判明して、謝罪したと。
しかし、ここにも嘘がなおありそうです。自社のタレントたちが合コンや飲み会をやってハメ倒していることを知らないはずがあるめえよ。今まで通り、力で潰せると思っていたら、吉本所属のタレントたちが流れ弾で次々負傷し、古傷までも掘り返されており、このままでは屍累々になるのは必至です。内部からも社の姿勢に対する批判が出てきて、遂には音を上げたのが実際のところでしょう。
松本人志が提訴したことを発表した2日後にこれを出したのですから、松本人志を切り捨てることを公表したようにも見えます。前回書いたように、松本人志を擁護する気はないながら、その内面を想像すると、涙を禁じ得ません。
私のところまで問い合わせが
訴訟は松本人志に押し付けて、吉本興業は徐々にフェードアウトしようとしても、スポンサー、テレビ局、雑誌メディアの進行が速すぎて、すっとぼけることは無理と判断するしかなくなったわけですが、遅すぎましたわね。
内容のない弁明は迅速、その訂正は鈍重。正反対のようでありながら、どっちも「自分を守る」という意味では同じです。だから、「現在調査中」として様子を見れば、もっとうまく立ち回れたろうに、蓄積された驕りが拙速な反応を導いたのでしょう。
そのため、松本人志から吉本所属芸人全体にターゲットが拡大してしまって、もう抑えられない。このネタは売れますから、私のところまで問い合わせが来てます。私が知っているのは古い話が多いですし、吉本所属の芸人たちにナンパされて、ホテルで乱交状態になったとか、吉本興業の社員を含む芸人たちがヤリマンたちと合コンしたとか、私の感覚では「全員が楽しかったらいいんじゃね?」ってもんです。淋病に感染したのはかわいそうですし、「ナンパしている暇があるなら、とっとと病院行けよ」と思いますが、こんなことをチクる気はない。
つうことで、私に問い合わせても無駄です。「女性セレクト指示書」に滲む松本人志の内面についてなら語れますが、週刊誌やスポーツ紙のネタにはならんです。読み物としては面白いと思いますが、前回だいたい書いたので、そちらを読んでいただければ十分かと存じます。
前回は前々回の続きとして最後まで書いてあったのですが、松本人志が提訴する旨の発表を加えたため、長くなりすぎて、カットした部分があるので、それも出しておくか。
✳︎「週刊文春」の最新記事を読もうとした際に気づいたのですが、「週刊文春」電子版は寄付を募っているのですね。松本人志の件がきっかけではなく、2023年6月9日付です。第一弾で45万部を完売したと編集長が喜んでましたが、「そんなに部数が減ったのか!」と驚きました。かつて刷り部数が80万部だった時代もあったはずで、今も50万部は刷っているんだろうと思ってました。45万部とそんなに変わらんけど、印象は大きく違います。
。
(残り 1386文字/全文: 3039文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ