松沢呉一のビバノン・ライフ

吊り目を差別表現だとすることは東洋の表現を否定すること—日本では「港区放尿女子」が世間を騒がせ、英国では「小粉紅」が世界を呆れさせた[追記編1]-(松沢呉一)

 

 

「チン・チェン・ハンジ」は「ジンチエン・カン・チィ」

 

vivanon_sentence

ドクターKが弾いた「Ching Cheng Hanji」が自分らに対する差別だと難癖中国人は主張—日本では「港区放尿女子」が世間を騒がせ、英国では「小粉紅」が世界を呆れさせた[5]」を書いた段階では「Ching Cheng Hanji」の歌詞がわからなかったのですが、以下に出てました。

 

 

近前看其詳上寫著

秦香蓮年三十二歲

那狀告當朝駙馬郎

欺君王瞞皇上

那悔婚男兒招東床

 

近前看其」のピンインは「jìnqián kàn qí」です。改めて聴いてみると、たしかにそう歌ってます。「Ching Cheng Hanji(チン・チェン・ハンジ)」の、より原音に近い表記は「Jinchien Kan Chi(ジンチエン カン チィ)」でした。近いけど、全部違ってます。

もう定着しているので、以降も「Ching Cheng Hanji」としますが、「Ching Cheng Hanji」があまりに良くて、繰り返し聴いているうちに、上の動画が示されて気づけました。

あとは、元の京劇でも確認したい。上のフレーズは物語の前提を説明する内容だと思います。ト書きみたいなもん。だとすると冒頭に出てきても良さそうですが、裁判劇なので、裁判官のセリフか。

また2時間観るハメになるかもしれないので、フルヴァージョンで確認するのはやめておき、その部分を切り抜いた動画がないものかと探したら、ありました。

 

 

タイトルが「Ching chang hon chi」になってますが、ピンインを調べてない人が中国のサイトからYouTubeに転載した際につけたのだと思います。

4文字目から「近前看其」が始まりますが、メロディが違っていて、これでは京劇を全編観ても探せないですわ。ピッチをいじっているんですね、おそらく。

つねに男が歌うと決まっているわけではないかもしれないですが、「Ching Cheng Hanji」のあの歌も男声の可能性が高そうです。ピッチを変えているとわからんです。

ここで注目すべきことは、「Ching Cheng Hanji」は中国でも話題になって、その部分を切り抜いたのがいたであろうことです。

それでも、難癖を平然と言ってのける難癖中国人グループだと、「発音を改竄して、元の意味をわからなくした。文化盗用だ、中国文化を軽視した差別だ」と言いかねません。

そもそもドクターKが「Ching Cheng Hanji」を演奏した際にはまだ揉めておらず、ドクターKは彼らをおもに日本人だと認識してましたから、中国人に当てつけをする理由はなく、イントロとして今までも使ってきて、この日も手癖で演奏したか、東洋っぽい曲として選択した可能性があるだけです。

Mengying Liuが「Ching Cheng Hanji」を持ち出したのは、動画を観た人に指摘されて以降か、プロパガンダ部隊が動画を観ながら、ツッコミどころを探したのだろうと思います。ドクターKが動画を撮っていてよかったですね。彼女自身、弁明動画でわざとらしく顔を消してドクターKの動画を使用してます。あれだけ「撮るな」と騒いでおいて、自分の正当性を主張する時はその動画を利用する図々しさ。

 

 

吊り目の歴史

 

vivanon_sentence

難癖中国人がそう言っていたわけではないので、「ドクターKが弾いた「Ching Cheng Hanji」が自分らに対する差別だと難癖中国人は主張—日本では「港区放尿女子」が世間を騒がせ、英国では「小粉紅」が世界を呆れさせた[5]」では軽く触れただけでしたが、ステロタイプな表現をすぐさま差別表現だとすることに対して私は批判的です。

改めて「トムとジェリー」を確認してみましょう。

 

 

これを見て、「中国人をイメージしたもの」と受け取れる特徴のひとつは、吊り上がった目です。京劇のメイク自体がそうなっていたことはすでに確認した通り。

 

 

next_vivanon

(残り 831文字/全文: 2573文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ