松沢呉一のビバノン・ライフ

ありがたさの重荷—なぜ車椅子インフルエンサーは車椅子クレーマーになったのか[上編]-(松沢呉一)

 

銭湯と車椅子利用者

 

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たまに車椅子利用者が銭湯に来ているのを見かけます。

区や市町村が運営している障害者用施設でも入浴でき、家庭の風呂よりは広くて安全だったりしますが、「もっと広い風呂に入りたい」「温泉に入りたい」「露天風呂に入りたい」と考える車椅子利用者は、スーパー温泉に行くでしょう。スーパー銭湯だったら、たいてい入口や通路が広く、エレベーターもついてますし、スタッフも多いですから、困ることはあんまりない。

近隣にスーパー銭湯がない場合、組合銭湯に行きます。天然温泉や露天風呂を諦めざるを得ないことも多いでしょうが、段差をなくし、手すりをつけている組合銭湯もありますし、車椅子で入れるトイレが設置されていることもあります。とくに新しく建て替えられた銭湯でよく見ます。

行ける範囲で比較的入りやすい銭湯に行くわけですが、その際は家族なり、ヘルパーなりの付き添いが必須になっていることが多いかと思います。今まで私が見たケースはすべて付き添いがいました。確認したことはないですが、付き添い人がいれば断る銭湯はあんまりないんじゃないですかね。

ただし、混み合う時間帯は避けて欲しいでしょうから、「平日だったら18時から19時まで。祝祭日は閉店に近い時間」といったように、時間指定されることがありそうなので、事前連絡は必須。

事前連絡をせず、付き添い人もおらず、突然やってきた車椅子利用者が尊大な態度で「入浴するのを介護しろ」と言ってきたら、「区の施設に行くか、人員に余裕があるスーパー銭湯に行ってくれませんか。予約制のところもあるので、どちらも事前に連絡した方がいいですよ」とアドバイスします。

人員がいない銭湯では、受付を離れることができないので、相手をする余裕はありませんし、体を持ち上げてうっかり落としたりしたら一大事です。銭湯経営者だって高齢者が多いのにさ。

そしたら、SNSで悪意に満ちた投稿をされて、嫌がらせ電話が鳴り止まず、店主はすごく悔しくて悲しくてトイレで泣きましたとさ。

✳︎東京産業労働局観光部「アクセシブル・ツーリズム」より錦糸町・御谷湯の福祉型家族風呂。高齢者や障害者用の個室で、90分1,500円(同伴者も入浴する場合は別途入浴料が必要)。東京の銭湯ではここが唯一のよう。経営者のインタビューも読めます。他に文句を言うのでなく、こういう試みを取り上げることで、他店も後に続くように応援することが、インフルエンサーの役割でしょうに。

 

 

なぜ車椅子インフルエンサーは車椅子クレーマーになったのか

 

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車椅子インフルエンサーなる中嶋涼子ついては、十分批判されているし、もう逃亡したので、この上、言葉を重ねる意味はないだろうと思いながらも、「なぜ車椅子インフルエンサーは車椅子クレーマーあるいは車椅子迷惑系になったのか」については、あんまり突っ込まれていないようなので、そこに絞って書いておくことにします。

私の主たる批判対象は中嶋涼子個人ではなく、彼女を擁護している人々であり、そういう人々が、他者の事情を一切顧慮できない化け物を生み出していることを説明します(化け物も中嶋涼子個人を指すのではありません)。「健常者にも障害者にも他者の迷惑を想像できない欠陥者がいるってだけだろ」という意見もありましょう。その通りですけど、もう少し丁寧に見ていきたいと思います。

中嶋涼子に対しては、複数の車椅子利用者からも批判が出ていますので、それをもとに話を進めます。

 

 

この前も後もありますので、そちらもご覧ください。間もなくハル☆シューティングスターさんは、直接中嶋涼子とコンタクトしようとしてます。このまま逃げて終わらせるのは、中嶋涼子自身の将来にとってもいいことではないので、彼女は対応した方がいいと思います。

 

 

 

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