松沢呉一のビバノン・ライフ

汚職が蔓延する中国に発展はないと国民は見抜いている—中国人のマナーを鑑賞する[4]-(松沢呉一)

力ずくで自分の利益にする」という作法と文化大革命—中国人のマナーを鑑賞する[3]」の続きですが、今回は前置きが長いです。

 

 

インドと中国の国民意識

 

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幾度も取り上げている「ロシア人にインタビューしてみた」は、プーチンや広報官の発言を聞いたところでわからない国民の意識を垣間見ることができます。ああいう国では、言いたいことを言えないですから、インタビューに出てくる人たちだけで全体を判断することはできないですが、その端っこだけでも知るのは大事。

同じ意味で、以下の動画も面白く観ました。5ヶ月前のものです。

 

 

インドが中国の人口を抜いて、インド人たちは喜んでいるのか、恥じているのか、どっちなんだろうと気になっていたのですが、一人も喜んでいるのはおらず、全員否定的です。さすが、人口抑制策を半世紀前から実施している国だけのことはあります。

私が子どもの頃にはインドと言えば人口爆発と表現されてましたが、それから少しずつ効果が出てきて、今や人口増加率は世界101位まで落ちています(2015年から2020年までの数字)。並大抵のことではなく、テレビで、コンドームはもちろん、ピルIUDインプラントパイプカット堕胎薬のCMまで流れ、公共広告で「子どもは少ない方が家庭は幸せ」といったキャンペーンが流されています。中国の「一人っ子政策」のような国家の強制的人口抑制ではない、国民の選択による人口抑制の手本と言うべき国なのです。

「人口抑制策をとっているのに、どうして世界一になったのか」が気になる人もいましょうが、抑制されてもなお人口は増え続けていますし、中国はインドより人口増加率が低いためです。

 

 

インドは人口抑制の手本

 

vivanon_sentenceインタビューの中に、中国の人口を抜いたのは「インドは移民や難民を受け入れているからだ。対して中国は受け入れていない」と言っているインド人がいます。これは怪しい。

インドに入ってくるのもいますが、インドは世界一の移民送り出し国です。2020年に1,790万人が国外に出ています。エンジニア、医師、研究者などの専門職の移住も多いのですが、そういった正規ルートの移住だけではありません。メキシコ国境から米国への不法入国者でもっとも多いのはメキシコ人、2番目はエルサルバドル人、3番目がインド人です。

彼女は「私はどの国に対しても憎しみを持たない」と言いつつ、ちゃっかり中国をdisってます。

このインタビューはニューデリーと北京ですから、都市生活者であり、かつ教育を受けている人たちです。だから「人口世界一は恥ずかしい」という感覚を持っているのであって、中の一人が言っているように、「子沢山は栄誉であり、義務である」という考えから抜けられていない地域もあり、教育程度が低く、そんな考えもなく、ただただセックスをやって、ただただ産んでいる人たちもいます。

時間がかかるし、手間がかかるしで、人口抑制は容易ではありませんが、現にインドはそれを実行してきました。

対して、人口抑制がほとんど機能していないのがアフリカ諸国です。「国の人口増加率順リスト」の上位50カ国の9割がアフリカ諸国。

 

 

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