松沢呉一のビバノン・ライフ

「力ずくで自分の利益にする」という作法と文化大革命—中国人のマナーを鑑賞する[3]-(松沢呉一)

中国で炎上した食べ放題の動画に見るマナーの変化—中国人のマナーを鑑賞する[2]」の続きです。

 

 

農夫山泉バッシングの背景

 

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中国の飲料水メーカー農夫山泉が激しいバッシングに晒されています。

 

 

この報道ではキャップの色から始めているので、なんでも旭日旗に見えてくる反日韓国人と同類に見えましょうが、鯉のぼりははっきりと日本を意識したデザインです。しかし、鯉のぼりは玄米茶のパッケージですから、日本をイメージさせるデザインなのは少しもおかしくない。日本で烏龍茶のデザインが中国を意識したものになっているのと同じ。

これだけが問題になっているのではなく、農夫山泉は国外からの投資を受け、鍾睒睒代表の息子が米国籍を取得するなど、同社が広く国外に目を向け、米国進出を視野に入れていることが反発されています。んなことを言ったら、BYDであれ、TikTokであれ、HUAWEIであれ、国外に進出している企業は全部ダメです。

さすがにこれでは弱いので、商品デザインというわかりやすいところで、反日感情が刺激されたのでしょう。んなことを言ったら、技術を盗み、著作権を盗む、中国で上から下までやっている方法を全否定しなければならないはずですが、奪うのはいいみたいです。とくに敵と認識する国から盗むのは、「こんなもんはオレらでも簡単に作れる」「オレらの方がうまく作れる」という自尊心をくすぐってくれます。

しかし、農夫山泉のやり方は、玄米茶は日本発のものであることを表示して、いわば敬意を払っていることが許せない屈辱に感じられるのではなかろうか。日本とは感覚が逆。たんに知的所有権に対する理解が乏しいということもありましょうが、「力ずくで自分の利益にするのは当然」という考え方が中国人の作法なのだろうと思えます。

 

 

無料フライドチキンの奪い合い

 

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「力ずくで自分の利益にする」という作法は、国内で完結して実施されています。

香港のSCMPが昨日出していた最新作。

 

 

中国南部としか出てなくて、検索しても都市名がわからなかったのですが、車内の広告に「貴州」の文字が見えますので、おそらく貴州の北にある重慶でしょう。大きな都市ですが、住む人々の作法は昔から変わらず。日本でもバーゲンでは人が殺到しますし、オタク系グッズの限定発売ともなれば殺気立ちますが、チキン200セットでこうも人は集まらないでしょうし、奪い合いにはならんでしょう。

しかも朝です。そのため、騒動に巻き込まれて遅刻した人が続出。

中国でやったらこうなるのは火を見るより明らかであり、おそらくこれを仕掛けたフライドチキン店なり、広告代理店なりは混乱を引き起こすことを前提にした、それどころか混乱を引き起こすようにやったのだと思います。話題作り。車両の中も外も全面広告を出す金があるのに、200セットしか用意しないなんてあり得ないでしょう。

 

 

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