松沢呉一のビバノン・ライフ

オルスクの洪水とシベリアの崩壊—ヤクート人とチェチェン人の抵抗-(松沢呉一)

 

 

オルスクとカザフスタンの洪水被害は今がピーク

 

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オルスクのダムが決壊して1週間になるのに、その後もロシアとカザフスタンの大洪水に関する報道が続いてます。

 

 

水位は、下がるどころか、上がり続けていて、今現在ピークを迎えているところです。1日で水が引けた場合、建物や家具は修復可能ですが、長期にわたると傷みがひどく、住民は家が流されなくてもすべて失うことにことになります。

カザフスタンだけで10万人以上が避難。対してロシアは1万人程度のようですが、今なお多数がアパートの上部に残っていて、ガスが止まり、水は飲めない汚水のため、このままでは病人や餓死者が出そうですし、凍死するほどではないにしても、この地域はなお暖房が必要で、その点でも厳しい状態です。

ロシアは停戦を申し入れて、軍を救援活動に送り込んだ方がいいと思うのですが、数日前もウクライナのオデーサへミサイルを撃ち込んで死者が出ていますし、以降は各所の電力施設へ攻撃。どうにもならんわ。

 

 

そうこうするうち、ロシア最大の石油と天然ガスの産油地である西シベリアのチュメニも洪水のために非常事態宣言が出され、製油所が操業停止に追い込まれたとの情報も出ています。これが事実なら、ウクライナの攻撃と洪水で、ロシアの精油能力の20パーセント程度がストップしたはずです。攻撃された製油所の復旧は6月になるとロシアは発表。ボロボロになってきました。

ロシアはほっとくとして、通常、カザフスタンの災害にはロシアが救援に駆けつけるそうなのですが、今回はそんな余裕はなく、カザフスタンは西側が支援した方がいいんでないかい。人道的見地だけでなく、政治的見地からも。

 

 

ヤクーツクは消滅する?

 

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以前書いたように、ロシアでは、高官から庶民まで、気候変動によって、気温の上昇、海面の上昇が生じて、多くの国で居住に適さない土地や農業に適さない土地が拡大するのに対して、極寒エリアが多いロシアでは居住や耕作が可能になる土地が拡大するため、気候変動はロシアに有利と本気で考えているようですが、その前にロシアは溶けて消滅するでしょう。今回の洪水はそのことをよく見せてくれています。

 

 

中央より左下のマークがついたところがオルスク。緑の濃い部分がウラル山脈の南端。ここから北にウラル山脈が伸びています。

 

 

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