松沢呉一のビバノン・ライフ

英国が「不法移民ルワンダ移送計画」に至った事情—本来救済すべき対象に金・人材・労力を回す方法-(松沢呉一)

 

英国で不法移民をルワンダに移送する法案が可決

 

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就学ビザや就業ビザを得て滞在し、永住資格を得るなり、帰化するのは歓迎。しかし、不法滞在者に対しては厳しく処す。

ざっくり言えばこれが日本政府の方針かと思います。大枠として私もそう考えているのはここまで書いてきた通り。

日本だけでなく、他の国でも、不法入国・不法滞在に対して厳しい措置を取りつつあり、その筆頭が英国です。

 

 

以前から議論されていた不法移民をルワンダに移送する法案が可決。

なお議論は続きそうですが、残っている疑問点はもっぱら「ルワンダで人権が守られるか否か」です。英国ではすでに政府が難民制度の崩壊を認めていて、根本的な対策を講じない限り、不法移民が増大し、治安の悪化、税金の支出増大を防げないことは明らかです。

2022年、英国に不法入国したのは4万5千人以上。うち難民申請を出したのは4万人以上。同年に難民申請をしたのは、それまでの不法滞在者によるものを合わせて約7万5千件。政府の支援で生活している者は11万人以上。それらにともなう税金の支出は30億ポンド(約6千億円)です。

この現実を前にして、国民の多くは不法移民対策をすること自体には反対していないのだと思います

 

 

英国の決断

 

vivanon_sentence私も長らくわかっていなかったのですが、英国がEU離脱する一因になったのが移民問題です。EUが移民受け入れの方針を崩していないことへの反発です。イタリアを筆頭にEU各国で極右政党が支持を増やしていることもここに原因があって、移民を受け入れると、極右が伸びる関係です。

その点、英国は、政府が対策を打ち出しているので、国民は極端な政党に走らなくて済んでいるとも言えます。具体的には、米国同様、不法入国・不法滞在からの難民申請は今後できなくなります。難民として受け入れられたいのなら、正規の手続きをとれと。

これは当然の判断であり、英国に不法入国する「難民」は、アフリカやアジア各国から、フランス経由で小船に乗って英国にやってきます。フランスの前に、ギリシャ、イタリア、スペイン、トルコなどを経ていて、自国から直接英国にやってくるのはまずいません。英国の言い分としては、「安全な国に到着した段階で難民申請を出していない。彼らが難民とは言えないことは明らかだ」ってわけです。

彼らが安全なはずの国を素通りしていくのは、「より稼げる国」を求めてのことです。ブローカーに払う金はあるわけですから、日本円で数十万程度の金は得られる人々ですが、「もっと欲しい」。しかし、留学するほどの金や能力はない。就労できるほどの技術もない。それでも不法に入国して、夢を叶えたい。その手段が難民申請です。

 

 

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