OKINAWA Island Hoops

桶谷大HCが感じるチームの“伸びしろ”は… CSに向け「遂行力」向上へ(前編) 【開設記念インタビュー】

 昨シーズン、Bリーグで初優勝を果たした琉球ゴールデンキングス。

 今シーズンも現時点で勝率7割を超え、西地区首位を走る。ただ、成績ほど順風満帆ではない。個の存在感が際立つヴィック・ローの加入や、アルバルク東京で2連覇を経験しているアレックス・カークの帰化など戦力が充実する一方、連係を深めるのに苦心。昨年10月の開幕から長い時間をかけ、少しずつ成熟度を高めてきた。

 これまでの戦いをどう評価し、どのような決意でレギュラーシーズン最終盤を戦っているのか。現在、チームとして最大の目標はチャンピオンシップ(CS)でのホームコートアドバンテージを獲得することだが、リーグでNo.1の集客力を持つ沖縄アリーナの大声援はチームにとってどのような力になっているのか。

 「OKINAWA Island Hoops」の開設を記念し、クラブによる選手やHCへのインタビューに、独自の聞き取りを追加した一問一答をお届けする。

 最後の第三弾は、bjリーグ、Bリーグでキングスを頂点に導いた桶谷大HC。前編では、今シーズンの振り返りやチームのポテンシャルについて語ってもらった。

インタビューは313日付け

目次

・お互いをリスペクトして、ボールが回り出した

・課題は「ディフェンスのコミュにケーション」

・沖縄アリーナに吹く「琉球の風」

お互いをリスペクトして、ボールが回り出した

ーーー今シーズンはまわりから追い掛けられる立場となりましたが、ここまでの戦いの評価はいかがですか。

 「序盤はかなり苦戦しました。なかなか自分たちが目指しているバスケットが見せられなくて、しんどい思いをしてきました。ただ、その分『なんとかしないといけない』という思いが強まり、チームの中でいろいろ話をして、コミュニケーションが増えたことで小さいことがどんどん積み重なっていった。アレックスが帰化して、ヴィックがハンドラーとしてプレーできるようになったこともあって、ほど良くチームとして完成しつつあるかなと思っています」

ーーーカーク選手の帰化以外にも、何か好転をするきっかけがあったんでしょうか。

 「今シーズンは本当に良くなったり、悪くなったりです。『これ良くなるいいきっかけになりそうだな』と思っても、また悪くなったりとか。やっぱり一番は、みんながお互いをリスペクトし合うようになり、ボールが動き出したことですね。上位チームに対してどうやったら勝てるかを考えた時、やっぱりボールが回らないと勝てない。宇都宮ブレックス(12021日)やアルバルク東京(234日)との連戦は11敗だったんですけど、ボールが回ったら点数は取れる、でも回らなかったら自分たちが苦しい時間帯になる、というのは試合を通じてみんなが分かってきた。それが、その後の結果に結び付いていったのかなと思います」

ーーーもどかしい時期も乗り越えられる自信は持っていましたか。

 「ボトルネック(問題となる箇所)は大体分かっていたので、『これさえ解決できたら』という感覚はありました。バスケットは5人でやるけど、一人一人にいろんな個性がある。その個性は生かしつつ、チームでやらないといけない。僕のコーチングスタイルは、どっちかというと最初から型にはめるんじゃなくて、それぞれに個性を出してもらいながら、そこからブラッシングしていく。最終的にいいチームをつくれる自信はあるんですけど、途中で止めてしまうとそれできないんです。やっぱりそこら辺の葛藤はありましたね」

課題は「ディフェンスのコミュニケーション」

ーーー現状のチームを見ると、どの辺りにポテンシャルを感じますか。

 「オフェンスはボールさえ回ったらリーグでもトップクラスの破壊力があると感じますけど、ディフェンスはまだまだ課題が残っています。コミュニケーションをもっと良くして、目の前の簡単なイージーショットを打たせないようにできるか、というところですね」

ーーー終盤戦はより一つ一つの勝ち負けが大きくなってきます。そこに挑むのに当たっての決意はいかがでしょうか。

 「やっぱり勝たないといけない。ただ、勝つためにいろんなことをやるのではなくて、今持っているものをしっかり100%近くで遂行できるようにしていくことが必要です。それが、自分たちが勝つ確率を上げる近道だと思います」

ーーー沖縄アリーナには毎試合多くのブースターが駆け付けています。どのような試合を見せたいですか。

 「もちろん勝ちたいという思いは強いですが、やっぱり勝っても負けても『またキングスを応援したいな』と思ってもらえるバスケットをすることが大事です。それをやり続けられたら自分たちは強くいることができますし、それこそが勝つための確率を上げる一番の方法だと思います。キングスのブースターが見てて楽しいと思えば会場の熱気も上がっていきますし、自分たちにも追い風が吹く。そういう状況をつくるため、応援したいと思ってもらえるバスケットをし続けたいですね」

沖縄アリーナに吹く「琉球の風」

ーーー連覇に対する周囲からの期待は感じますか。

 「毎年プレッシャーはあるんですけど、どこで試合をしようが、どういうシチュエーションだろうが、自分たちがやるべきことは目の前の仕事を遂行することです。そこにしっかり集中して、自分たちがやるべきことをこなしていきたいと思っています」

ーーーこれからの戦いでは、CSのホームコートアドバンテージを獲得できるかが大きなポイントになってきます。やはりホームの力は偉大ですか。

 「いやもう、絶対CSは沖縄アリーナでやった方がいい。だって、ありえないです。僕がキングスのHCに再就任してから、沖縄アリーナでCSの試合をして、負けたことがないんですよ。それ以上の何でもない。僕たちは沖縄アリーナで、ファンの人たちに勝たせてもらっているのは間違いないんです。沖縄アリーナには、琉球の風が吹くんです」

(文・写真 長嶺真輝)

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