【世界のロック記憶遺産100】 『フィジカル・グラフィティ』 ツェッペリンの失速は王様になってしまったことの弊害だったのです (久保健司)
【世界のロック記憶遺産100】 ザ・ローリング・ストーンズ 『レット・イット・ブリード』 でストーンズはクロスロードで悪魔と何の取引をしたかということを神秘主義じゃなく、音楽的に書きましたが、本当に悪魔と取引をしたと言われていた人たちがレッド・ツェッペリンです。
70年から76年くらいまで、パンクが登場くらいまで、ロックは悪魔と取引するのが流行っていました。今でいう陰謀論に引っかかるみたいなものです。
デヴィッド・ボウイも魔術師アイレスター・クロウリーにハマってて、インタビューで「今日の数字はよくなかった。何せ僕らと観客は4対4、これは反乱を意味するんだ。魔術によるとロスで僕たちは5が出るらしい。観客は6、つまり心地よいってことさ。数字には絶対何か力があるよ」(「 デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス」パオロ・ヒューイット著)と言ってました。
ジョン・レノンも同じ神秘主義にハマっていて、ボウイとジョン・レノンが一時接触していたのも数字の魔力のせいです。
パンクの時にこういうオカルトは馬鹿にされ、消えていったと書きましたが、ボウイやジョン・レノンが言うような数字には力があるというのは流行っていて、23という数字には力があると妄想に取り憑かれている人たちがいて、23スキドゥーというバンドや23エンヴェロップというデザイン・チームが23という数字を意識して使っていました。
どういうことかというと、何か大事件が起こった日には23という数字が関係しているという妄想です。それで23という数字には意味があるとみんなが言い出したのです。
これを誰が言い出したかというとウイリアム・バロウズです。このアホな神秘主義の扇動者です。だからボウイもジミー・ペイジもバロウズと対談したりしているのです。まじでみんな信じていたのです。僕も信じていました。「ナンバー23」という映画にもなってます。
全部ただの妄想なんですけどね。皆さんも試してみてください。23という数字を意識してみてください。そうしたら至るところに23という数字があるということにびっくりしますよ。一週間くらいやってみてください。あれこんなところにも23がと目に付きます。
これってただ意識するとその数字が目立つというだけなんですけどね。いまだと9.11という数字ですね。みなさん騙されないように。
ジミー・ペイジなんかは騙されたわけです。アイレスター・クロウリーが住んでいた家を買って、アイレスター・クロウリーと同じくらい力があると思ってしまったケネス・アンガーの映画製作を手伝ったり、悪魔の秘密を知りたくって魔術関係の本ばっかり扱ったお店「ジ・イクノックス」をやったり、イクノックス=春分って、お前はゴア・トランスか。
こんなことやっているからレッド・ツェッペリンの大成功は悪魔と取引したとみんなから陰口を叩かれていたのです。
本当にレッド・ツェッペリンの後期にはロバート・プラントは自動車事故に遭うし、プラントの息子は突然病気で亡くなるという不幸が訪れた。この頃は僕もなんとなく、ジミー・ペイジは悪魔と取引していたのかなと思いました。一番思っていたのは、20年前くらいのジミー・ペイジとロバート・プラントの顔です。生気を抜かれたかのようなおじいちゃんのような顔をしていたのです。
ツェッペリンがなぜ悪魔崇拝と叩かれていたか、それは彼らがビートルズ、ストーンズ以降のバンドで、頂点を極めたバンドだからです。いやビートルズ以上の成功を収めたバンドなんです。
スタジアム・ツアーというのはビートルズが始めたのですが、彼らはその1回目のツアーでこんなツアーやっていても音楽的ではないと挫折します。ビートルズがやれなかったことを引き継ぎ自分たちのものとしたのがツェッペリンです。ストーンズももちろん引き継いだのですが、ツェッペリン以上の成功は手に出来ませんでした。ツェッペリンは前座もなしで、自分たちだけでスタジアム・ツアーが出来るバンドになったのです。前座は入らないというアイデアはフーが始めたのですが、フーの場合はロック・オペラというアイデアがあったから出来たわけで、『トミー』に変わる動員力のあるロック・オペラを作れなかったことによって、通常のロック・ツアーのスタイルに戻って行きました。しかし、ツェッペリンは自分たちだけで4時間もライブが出来るバンドとなったのです。前座なんか入らない、全てのコンサートの収益を全部自分たちのものにしたのです。
それまでの成功したロック・バンドはこれから売れるであろうロック・バンドを前座に使いシーンに貢献してきたのですが、ツェッペリンは全部自分たちでやることにしたのです。こんなことをしてたら味方もだんだといなくなっていきます。
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