松沢呉一のビバノン・ライフ

養護教諭がソープランドで働いていて懲戒免職になったのは妥当か否かを検討する—懲戒の基準[47]-(松沢呉一)

セクハラ防止とセクハラを利用した報復を防止するために日本でできること—懲戒の基準[46]」の続きです。

 

 

事実はファンタジーに勝てない

 

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今回、モダンフリークスの福田君がやっているムックの原稿は、私のインタビューで10ページ以上作っています。私はその辺の原稿を頼まれることがまるでなくなってますが、頼まれてもあんまり乗り気ではない。全部過去に書いたことなので、繰り返しは面倒臭い。

自分で書こうとすると、今まで書いたことのないことを入れ込もうとして細部に入り込み、読者にわかりにくいものになります。人がまとめてくれた方がいいのです。

なぜ性風俗にこだわったのかの事情も語っているのですが、全然本当のことが語られていないと気づいたのがひとつのきっかけです。遊廓については嘘だらけ赤線の正確な定義さえ忘れられています。パンパンについても現実とは違う「悲しい女たち」にされてしまう

こういったものを修正したかったのですが、私の力では及びませんでした。たぶんこれからも「関東大震災の際には大門が閉じられて娼妓が多数焼け死んだ」だの「戦後の焼け跡では子どものために街に立つ女たちがいた」と言い続ける人たちがいるでしょう。それがまた大学の先生だったりするわけで、肩書があれば嘘が通る現実に私は負けました。

そういえば遊廓の現実を書いた本の企画を福田君が宝島社にもっていってくれた時も、編集者にまるで違うものにされそうになって断りました

事実はファンタジーに勝てない。それが結論。

※新宿2丁目の角海老とパトカー。パトカーは別件で停まっていただけで、角海老とは無関係。2丁目もパトカーも本文と無関係です。

 

 

小学校の養護教諭がソープランドでバイトしていて免職になった件

 

vivanon_sentence「こういう話をいくらやっても無駄」と悟って、どんどん興味をなくしてしまいました。以前はGoogleで売防法関連、風営法関連の報道はチェックしていたのですが、それもやめてしまいました。性風俗の歴史についても調べることはとんとなくなりました。「ビバノン」に書いたところで読む人はそうはいないですし。

それでもSWASHのように闘い続けている人たちに対してはサポートはしたい。今回、出遅れながら戸定梨香に対する全国フェミニスト議員連盟なる団体の「難癖」(直接には警察ですが、実質的には戸定梨香も対象です)についてしつこく書いているのは、あれに対して闘っている人たちがいるからです。微力ながら私も応援します。

それと、この件については「口紅の役割」「裾の長さと女性の社会進出」「セーラー服の意味」といった、今まで論じたことのないテーマがいっぱいあるのも魅力的。そのため、まだ続きます

そういった、いわばフックみたいなものがあるとまた興味が蘇ることはあって、今回の福田君のインタビューを契機に、最近の売防法がらみの記事を読んでいたら、先月、多摩地区の小学校養護教諭がソープランドでバイトしていたことがばれて免職になったことが発表されていたのですね。この件もチェックしていなかったです。

 

2021年11月15日付教育庁「教職員の服務事故について

 

 

まず大前提として、公務員の兼業については擁護する余地はないと思っています。生活できるだけの給与を税金からもらっているんだから、その中でやりくりすべし。また、公務員は国民に対して偏りなくフラットでいなければならない立場でもあります。それが不必要な利害関係でどっかとつながるのはよくないってことでもあります。

私自身、現役の公立学校の教員が性風俗で働いている例を直接確認できたことはありません。第一に学校の先生は忙しく、とくに担任をもっていると、勤務外でも動かなければならないですから、そんな暇はない。今回の擁護教諭(保健の先生)というところがミソです。

長期の休みの間に働くくらいのことはできましょうが、ばれたらおしまいですから、相当に厳重なガードをしているはずで、簡単には人には言わない。店にだって嘘を言うのが多いでしょう。

 

 

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