松沢呉一のビバノン・ライフ

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の会議で謝罪したもう一人の気象学者—絶望の度合いを強めるIPCCの報告書-(松沢呉一)

気候変動がメインテーマですが、「続・プーチンと闘うロシア人たち—映画監督も科学者もアスリートも戦争に反対」ともつながってます。

 

 

 

IPCCの会議でウクライナ人の気象学者も謝罪した

 

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続・プーチンと闘うロシア人たち—映画監督も科学者もアスリートも戦争に反対」に、ロシアの科学者オレグ・アニシモフが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のオンライン会議でロシアのウクライナ侵攻を批判し、戦争を止められなかったことを謝罪した話を書きました。

あの回を出したあとで気づいたのですが、この会議で謝罪したのはロシアの科学者だけではありませんでした。

 

2022年3月3日付「NHK NEWS WEB

 

 

ウクライナ代表のスヴィトラーナ・クラコフスカって気象学者も謝罪したと言ってます。彼女はウクライナ水文気象研究所の研究員です。

このインタビューによると、2週間続いた今回の会議にはウクライナから11人が参加。しかし、ロシアの侵攻が始まって、避難や地下壕への退避で全員が途中で離脱。27日の閉会式で彼女はウクライナを代表して「たくさんの科学者などが何年もかけて取り組んできた報告書が、ウクライナ情勢によって注目度が小さくなってしまう。私もウクライナのほかの代表たちも本当に申し訳なく思う」と発言したとあります。

ウクライナ代表が謝るところではなくて、ロシアの研究者を責めるべきでもなく、ともに「プーチンの野郎がムチャクチャにしやがって」と怒るべきでした。

 

 

スヴィトラーナ・クラコフスカのインタビュー

 

vivanon_sentence以下は2年前にウクライナ・メディアに掲載されたインタビュー。

 

2020年2月12日付「Буквы

 

この時の自信に満ちた明るい表情と今にも泣きそうなNHKの表情とを比べてください(この記事では記者なりカメラマンなりの要望に応じて作った表情を見せていて、おそらく気さくでお茶目な人です)。

インタビューでは成層圏注入についても触れていて、否定的な見解を述べています。温室化ガスが消えるわけではないので、短期間の気休めにしかならないのだと。たしかに火山噴火の効果を考えると、うまくいけば1年程度滅亡を先送りできるかもしれない程度のもの。では、どこに希望を見出すべきかはこのインタビューをお読みください。

 

 

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