ブチャの虐殺で思い出すカティンの森の虐殺—見え透いた嘘を平気で言えるのはソ連時代からの伝統-(松沢呉一)
「「ロシアのGoogle」ヤンデックスの最高責任者が実質のプーチン批判をしてロシアを脱出—一人また一人と国外へ」の続きです。
ブチャの虐殺でいよいよプーチンは不利に
ロシア軍によるブチャ虐殺で、世界がブチ切れていて、たったの1日2日の間に、ロシアに対する経済制裁の強化、ウクライナに対する武器供与の追加策が続々発表されています。銭湯で怒っていたじいちゃんはまた怒っているでしょうし、私も怒っていて、武器供与しそうです。
この怒りは虐殺者たるロシアが「フェイクだ」「ウクライナがやった」などと見え透いた嘘でごまかそうとしていることで倍加しています。
ロシア国民の8割は「それでもプーチンを信じたい」って人たちですから、リテラシーが欠落していて、こんな嘘でも信じるわけですが、国家の指導者たちはそれで世界を騙せると思っているのですから、呆れます。騙せるのは、事実をフェイクとして取り上げたてめえらの国の国民だけ。
ゼレンスキー大統領は、すぐさまロシアがデマのプロパガンダをやり始めたことを踏まえてこう言っています。
「今は2022年です。第二次世界大戦後にナチスを起訴した人々よりもはるかに多くのツールを持っています」
ナチスは証拠となる書類を焼却し、証人になる人々を片っ端から殺してしまったため、証拠が不十分で追及しきれなかった人々が多数いて、それらの人々は戦後何食わぬ顔で実業家、政治家、裁判官として活躍し続けました。その点、今は証明する方法が多数あるとゼレンスキーは言っています。
すでに衛星写真で、ブチャの虐殺はロシア支配下で起きたことは立証されていて、これで十分だと思うところですが、そう思うのは常識に則っているからです。ロシアは非常識に則っています。
※「УКРАЇНСЬКА ПРАВДА」 共産党の機関紙「プラウダ」と無関係の「ウクライナ・プラウダ」。ゼレンスキーの演説をまとめた記事です。
カティンの森の虐殺を再度確認
ゼレンスキー大統領の発言では、嘘をつき、ごまかすのはナチスだとしているわけですが、当時のソ連も似たり寄ったり。
当時の赤軍は略奪とレイプを繰り返していたのはナチスシリーズで見た通りですし、「戦後東ドイツで起きていたこと—ベルント・ジーグラー著『いま、なぜネオナチか?』[2]」で軽く触れたカティンの森事件を見れば、ソ連とナチスドイツは似たようなものであることがよくわかりましょう。
ドイツとソ連は、1939年に不可侵条約を結びます。信頼関係があったわけではなくて、卑しいふたつの国家がここだけは手を握って互いにポーランドを好き放題侵略するための条約です。
ポーランドを分けあって、ソ連はポーランド西部を支配し、1940年に、スターリンの命により、22.000人のポーランド軍将校、警官、聖職者を虐殺して穴に埋めます。
翌年、ドイツはソ連支配地域に侵攻し、大量の遺体を発見し、「ソ連がやった」と公表します。自分らもポーランドではユダヤ人の前にポーランド人の虐殺をしておいて、「よく言うよ」って話なのですが、ソ連は「ドイツがやった」と平然と嘘をつき、ポーランド亡命政府を巻き込もうとして圧力をかけるも失敗。盗人猛々しい。
戦後、ニュルンベルク裁判で、ソ連はこのことを持ちだして、ドイツが敗戦して被告になったドサクサに紛れて、ドイツがやったものだと認めさせようとしてまたも失敗。
(残り 1046文字/全文: 2479文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ