ロシアがネオナチを増産している—続・ロシアでなされるナチス認定の内実-(松沢呉一)
「「プーチンこそヒトラーだ」と的確に指摘した人々が続々逮捕されている—ロシアでなされるナチス認定の内実」の続きです。
テレビの常連出演者が国外脱出
ロシアのウクライナ侵攻から100日経った区切りで、中間報告的なまとめ記事が多数出ていて、「歴史を過去のものから、今現在のものにした」といったニュアンスのことを言っている人がいました。ウクライナの編集者だったかな。うまいことを言うな。
カティンの森事件を筆頭としたポーランド人の虐殺、ホロドモールなどウクライナ人の虐殺、第二次世界大戦での赤軍の蛮行、ソ連体制下における反対派の弾圧など、歴史上のロシアの汚点は、時にはナチスという絶対悪の陰に隠れ、時には歴史ということで容赦されてきました。
しかし、今回ロシアがやったことで、それらの過去はすべて現在に通じるものであり、連続していることがはっきり見えてしまいました。再度それらを検証し、今現在の問題としてとらえ直す必要が出てきています。
ロシア国内でも、それを実感している人は少なくないはずです。
5月11日にはテレビ番組「なに?どこ?いつ?(Что? Где? Когда?)」という推理ゲーム番組の常連出演者だったロヴシャン・アスケロフがスパイリストに入れられました。
彼はロシアのウクライナ侵攻が始まって間もない3月6日にそれに抗議して、アゼルバイジャンに脱出(その後ドイツに落ち着いたよう)。国外にいて、ロシアの警察が手出しできないことがわかっていても指名手配されたモルゲンシュテルンと同じパターンです。
※2022年5月11日付「DW」ロシア語版 写真はロヴシャン・アスケロフ
噓体質も連続している
ロヴシャン・アスケロフがロシアの侵攻開始から2週間で国外に脱出することができたのは、それよりずっと前、2014年のクリミア半島侵攻の段階から、プーチンにうんざりしていて、今回の侵攻で「ひとつの答えしかない国にもう住めない」と判断したためです。
その辺の事情は以下のインタビューで語ってます(自動翻訳の字幕が出ます)。
彼はFacebookに、ソビエト連邦の元帥ゲオルギー・コンスタンティノヴィッチ・ジューコフの名誉を傷つけることを書いた容疑をかけられていて、これはナチスに関わることのようです。
このインタビューではその内容まで踏みこんでいます。私の知識がなさすぎ、また自動翻訳の限界で、何を書いたのかまでは不明ですけど、まさに彼は歴史を現在のものとしてとらえ直そうとしているようです。
また、ロシア・メディアによると、イヴァノヴォで、ナチスについて「国際軍事法廷の評決によって確立された事実の否定を目的とした」記述を書いた人物が逮捕されています。はっきりしないのですが、これはロヴシャン・アスケロフの件と関わっているかもしれない。あるいはカティンの森事件かとも推測します。
カティンの森事件だとすると、「国際軍事法廷の評決によって確立された事実」ではなく、ソ連がニュルンベルク裁判でナチスドイツに罪を押しかぶせようとして失敗したとすべきですが、おそらくロシア国内では、今に至るまで、ソ連がカティンの森事件の犯人であることを認めていないのだと思われ、ニュルンベルク裁判で認められたかのような噓くらいは言うでしょう。
今回のウクライナ戦争を見てもわかるように、ソ連時代から今に至るまで、見え透いたごまかしをやり、そのためには平気で噓を言うのです。その歴史も連続しています。
ウクライナ右派のシンパ?
以下のピアノを弾いている人は逮捕されたそうです。
https://twitter.com/Oce4ka/status/1527282009525354496?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1527282009525354496%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fzona.media%2Fnews%2F2022%2F05%2F19%2Fpianino
ウクライナの国歌「ウクライナは滅びず」です。
これはロシアのチュメニの堤防です。ピアノを弾いているウラジミール・フォファノフは起業家とのことです。
ウクライナ国歌を演奏するだけで、「ナチスの宣伝をした」とされたのではなくて、「メディアゾーン」によると、彼はウクライナ民族会議(UNA-UNSO)や右派セクターのスローガンを叫んだとあります。その場合は映像を出すこと自体で捕まるかもしれないので、カットしたのか、あるいはロシア当局のこじつけなのか、どっちか不明です。
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