ロシア人たちが逃げた先の国であまり歓迎されていない理由—「プーチンと同じロシア人だから嫌われている」では説明できないロシア人たちの問題点-(松沢呉一)
予備役の出国禁止実施か
ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパが入手したFSBのデータによると、先週水曜日から土曜日までで261,00人がロシアを脱出。1日6万人以上。ペースは落ちていないので、すでに50万人に達したはず。
それらの人の多くはビザがいらないジョージア、カザフスタン、モンゴル、また、今のところはまだシェンゲンビザで入国できるフィンランドなどに脱出しており、それらの国では1日8,000人から10,000人程度が入国しています。
噂通りだとすると、昨日28日には予備役が国外に出ることが禁止されたはずですが、一昨日の段階ですでにロシア領である北オセチアの出国管理事務所に併設して入隊事務所ができていて、チェックが始まっているとも報じられていました。地域によって時間差があるようですが、着実に予備役の出国禁止が実施されつつあります。
以降は予備役以外のみの脱出ですが、それでもこの勢いは止まりそうにないため、全面的に国境を閉鎖するとの説も出ています。ロシア当局は否定していますが、ロシア当局の言うことほど信用できないものはないし、「そんな予定はない」ではなく、「そのような決定はなされていない」と否定しているので、そのうち「本日決定しました」ということになりそうです。
あまりに急な移動が行われているので、受け入れ国では、反発も徐々に広がっています。
ロイターの映像。
ジョージアに逃げた人たちの現実です。
ジュージア人もたいていロシアが嫌いで、ウクライナ支持です。ジョージアに逃げてくるロシア人もまたプーチンが嫌いですから、ジョージア人は受け入れてますけど、ロシア人が「うちに帰ると、貼り紙が貼られている」と言ってます。「ロシアに帰れ」といった貼り紙でしょう。
これはひどいと思うのだけれど、ロシア人を嫌うジョージア人の気持ちもよくわかります。
ジョージアにおけるロシア人
ジョージア政府としては、金をもったロシア人が入ってくるのは歓迎という姿勢です。金のある観光客が押し寄せるようなもので、貧しいジョージアは、ウクライナ戦争勃発以降、経済的には上向きです。
前に見たように、たしかに空路でロシアを出ている人たちは裕福っぽい高年齢の人たちが多いのですが、陸路の人たちについてはそう金があるようには見えない若い世代が増えます。それこそ戦争に駆り出されるような層です。とくに自転車や徒歩で国境を越える人たちはバックパッカーみたいなもんです。見た目だけではわからんですけど。
IT関連の技術者などが多いようなので、ジョージアで労働力になればいいのですが、急速に人が入ってきますから、これから先は失業者が増える可能性も十分にあります。
ジョージアの人口は371万人。南オセチアをロシアに占領されていて、そちらにはロシア系の住民が多いわけですが、それ以外のジョージアにもロシア人は多く、人口371万人のうち、15万人がロシア人です。約4パーセント。今回のことで10万人程度がジョージアに入国する可能性があって、ロシア人急増です。
中には単純に「プーチンはロシア人、逃げてくる人もロシア人、同じロシア人は嫌悪の対象」という大雑把な人もいるでしょうし、増えれば増えるほど、ロシアがまた侵攻する口実になることを恐れる人たちもいて、スパイが混じっていることを恐れている人もいます。これは十分あり得ます。
この段階ではスパイはいないとしても、半年後、1年後に食いっぱぐれたロシア人に「情報を提供してくれたら金を出す」との誘いがあったら協力するのはいるでしょう。それがロシア人コミュニティ内で工作をして、新たにロシアが侵略する際の先兵になります。
宿泊費や家賃が高騰
日本向けの番組をやっているジョージア人でもっとも人気があるのはテリでしょう。彼女は少し前に初めて来日してましたが、今はまたジョージアに戻っています。夫がジョージアにいる日本人であることも公開し、妊娠したことも公開。
以下は、今回のロシア人の大量移入について述べた回。
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