松沢呉一のビバノン・ライフ

小学生でも老人でも男でも女でも政府に楯突くものは殺される国—それでもイランの国民には希望がある-(松沢呉一)

 

小学生も銃殺された

 

vivanon_sentenceまずはここまでの補足です。

イランで「警察や鎮圧部隊に殺された子ども」とあるのは18歳未満のことであり、日本の「児童」の意味だと書きましたが、以下によると、地域によっては小学生もデモに参加していて、殺されたのもいるそうです。

 

 

警察や軍としても、子どもをわざわざ狙ったわけではないにせよ、子どもがいることくらいはわかるはずで、「子どもに当たったらまずい」とためらってしかるべきです。それでも銃を撃つ冷酷さ。

と書いてまた訂正しますが、イランの警察や軍は、複数の16歳を殺していますから、もっと幼いことがわかっていても殺せるか。そのくらい冷血であり、異常です。

アムネスティ・インターナショナルによると、10月13日までに、少なくとも23人(男子20人・女子3人)の10代が警察、治安部隊、民兵組織によって殺されているとのことです。

圧倒的に男子の方が殺されていて、この10月13日にも10代の男子が一人殺されています。

イラン第二の都市マシュハドの16歳(または17歳)、アボルファズル・アディネザデは、その日、デモに参加し、民兵から24発の弾丸を受けて死亡。身元が確認されたのは翌日のことのようなので、アムネスティの数字にはおそらく含まれていないはず。

写真を見るといいヤツっぽい。まだまだ生きられたはずなのに。

 

 

17歳の女子高生が学校に入ってきた治安部隊に殺された

 

vivanon_sentence

同じ13日、イラン北西部に位置するアルダビル市で、イラン生まれ、イラン育ちのアゼルバイジャン人、アスラ・パナヒは、治安部隊に殴られて重症を負って病院に運ばれ、病院で死亡しました。死亡日がはっきりしないのですが、今週に入ってからだと思われ、彼女もまたアムネスティの数字には含まれません。

2005 年3月14日生なので、17歳のはずですが、イランでは15歳または16歳と報じられています。ニカ・シャカラミも上のアボルファズル・アディネザデも、16歳だったり、17歳だったり、複数の記述があるのは、「満と数え」と同じように、イランでは年齢の数え方が複数あるためだと思われます)。

彼女シャヘド女子高校の生徒で、マッサ・アミニを契機とする政府に対する抗議行動に参加していました。学校では、ハメネイ師を讃える歌を歌うことを拒否したグループに属し、「独裁者に死を」と反政府スローガンを唱えていました。これには教員の一部も参加。

また、学内ではヒジャブをはずす行動も見られたため、学校側は治安部隊を学内に招き入れ、10人が逮捕され、怪我をした12人が病院に運ばれ、そのうちの一人であるアスラ・パナヒは死亡。逮捕も十分過剰ですが、まして殺すようなことか?

イスラム革命防衛隊と関係のあるテレビ局は、彼女の叔父だと自称する仮面の人物が、「アスラ・パナヒは心臓病を患っていて、それが原因で亡くなった」と証言した映像を流していて、これはイランの常套手段です。家族や親族を脅して、噓の証言をさせます。この場合は仮面をかぶっているので、完全なでっち上げかもしれない。こういうところがホントに腹立つ。平気で噓を言うロシアや中国と一緒です。

 

 

next_vivanon

(残り 972文字/全文: 2355文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ