松沢呉一のビバノン・ライフ

脱北者夫婦が来日した動画を観て落涙しながら考えたこと—洗脳とは?[1]-(松沢呉一)

 

アンニさんとフンさん夫婦が来日

 

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このシリーズは感動しますし、さまざまなことを考える契機になります。

 

 

ジュジュ・ワールドというチャンネルを最初に知ったのは脱北者をゲストに迎えていた回でした。いくつかの脱北者の映像を見ていて、辿り着いたのだと思います。その時は、現在、韓国で格闘家をやっているジョン・ヒョクさんがゲストでした

充実した内容なのでぜひ(以下は総集編です)。

 

 

ジュジュさんは福岡に住んだこともあって日本語が達者で、日本に精通しています。

このチャンネルでは、時折ゲストを迎えながら、日本の音楽、食品、お笑いなどに対するリアクションであったり、日本旅行をした時の経験をおもに日本人に向けて見せていて、その辺はたまに観るだけですが、これ以降も脱北者をゲストに呼んでいる時は欠かさず観てます。

 

 

日本は怖い国だと教えられてきた

 

vivanon_sentenceイ・アンニさんはジョン・ヒョクさんの知人で、彼女も脱北者です。最初にジュジュワールドに登場した段階で脱北して7年と言ってます。中国にいた期間があるので、韓国には6年。それから1年経ってます。

 

 

この中で語られているように、アンニさんは北朝鮮での教育の影響で、日本は怖い国だと思ってました。

どういう教育が行われていたのかはジョン・ヒョクさんやアンニさんが語っている通り。もっとも強調される悪の国は韓国。アメリカの犬であり、資本主義で腐敗して、国民は貧困に喘いでいるのだと。親分のアメリカももちろん「悪の国」としてこれでもかと否定されます。

韓国、アメリカの次に悪の国として叩かれるのが日本。日本もアメリカの犬ですけど、日本については植民地時代のことを蒸し返して怖さを叩き込まれます。

ジョン・ヒョクさんもイ・アンニさんも、悪の国であり、極貧の韓国に行くつもりで脱北したのではなくて、食べるため、金を稼ぐためにまずは中国に。こういう人たちも多いのです。

しかし、そこでの生活も厳しい。違法入国であり、不法滞在ですから、存在していてはいけない人間です。工事現場、建設現場で働いて怪我をしても補償されず、死んだところでそれっきりでしょう。中国人の蔑視も強いし、悪徳ブローカーによって人身売買の餌食にもなります。人身売買というと、売春に直結する人たちが多いですが、中国ではだいたい嫁にされます。

一人っ子政策が長かった中国では男が余る。自然な出産でも男が多くなるわけですが(男の方が感染症などに対して弱いため、死亡率が高くなることを見越して男児の方が多いと言われる)、中国でも「後継は男」という考えが強いため、女児が生まれると、無理してもう一人産もうとします。税金を余分に払えば可能です。どうしても男があぶれるので、村単位で共謀して嫁になる女を誘拐したり、買ってきたりするのが農村部ではよくあるとされます。

しかし、中国であろうとも北朝鮮よりはるかに情報は得られますので、そこから韓国を目指します。これも容易ではなく、北朝鮮から中国に行く際に命を落とす人たちがいて、中国で命を落とす人がいて、韓国に行く際に命を落とす人がいます。

アンニさんはフンさんとこの過程で知り合っていて、韓国に着いてから、フンさんはアンニさんの母親もブローカーに頼んで韓国から呼び寄せて、2人は結婚し、今は母親と子どもたちと韓国に住んでいます。

 

 

そして日本へ

 

vivanon_sentenceジュジュさんは、日本を怖がっていたアンニさんをたびたびゲストに呼んで、日本の映像を見せたり、日本の食べ物を食べさせて、やがてアンニさんも日本に興味を抱くようになっていきます。繰り返し観ているので、もはやアンニさんは知り合いみたいな感覚があります。

そして、ついに今回夫婦で福岡旅行をすることに。

 

 

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