松沢呉一のビバノン・ライフ

脱北者にとっての自由・日本人にとっての自由—洗脳とは?[2]-(松沢呉一)

脱北者夫婦が来日した動画を観て落涙しながら考えたこと—洗脳とは?[1]」の続きです。

 

 

自由を求めて

 

vivanon_sentence脱北者たちが口を揃えて言うのは北朝鮮には自由がないってことです。言うまでもないことであり、私らにとっては既知の事実ですが、それが当たり前の世界に彼らは住んでいましたから、自由がなんなのかの実感もなかったでしょう。

(私らから見れば)職業を選ぶ自由も移動する自由もない。報道の自由、表現の自由なんてもんは多くの国民には関係のない自由かもしれないですが、友だちであっても、政権批判を口にすることができない。それをやれば密告されて処刑されかねない。ナチスドイツで子どもに密告された親がいたように、誰にも本心を語れない。

バレたら処刑されることを覚悟しながら、こっそり韓国ドラマを観たり、ポルノを楽しんだりしている人たちは別として、本心から金正恩を尊敬し、北朝鮮は地上の楽園だと信じている人たちもいるのでしょう。比較対象がないんですから。

脱北する際に、「自由を求めて」と思っているとは限らないですが、最終的に彼らはそれを求めて韓国までやってきます。そのために命を落とすこともあります。イランの人たちが命を賭けて自由や民主主義を求めて戦っているのと同じ。自由は命より重い。そう思える人たちにとっては。しかし、そう思えない人たちもいます。

✳︎ジョン・ヒョクさんが登場するジュジュ・ワールドの動画より

 

 

脱北しても北朝鮮に帰る人々

 

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前回埋め込んだ動画で、ジョン・ヒョクさんもアンニさんもが語っているように、韓国に着いた脱北者たちの多くがその瞬間に泣くそうです。「もう自由なんだ」「為政者を批判しても殺されない」「行きたいところに行ける」と。

しかし…。

脱北者のことを考える時に、無視することができないのは、脱北しても北朝鮮に戻る人たちがいるってことです。

今年の正月のこと。

 

 

スパイではないかとも疑われたようですが、スパイだったら、こんな方法で戻らないでしょう。

この場合は大きな話題になっていますが、人知れず戻る人もいて、ほとんど毎月のように北朝鮮に戻っていく脱北者がいます。なぜか。

 

 

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