補導された30人のうち、家出少女は何人?—歌舞伎町での一斉補導を正しく理解する[中]-(松沢呉一)

2023年03月31日 11時40分　
カテゴリ： YouTube • アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler) • 下北沢 • 新宿区 • 東京都 • 歌舞伎町 • 音楽 • 風営法

「警察が補導を徹底すればColaboは用なし—歌舞伎町での一斉補導を正しく理解する[上]」の続きです。

ライブハウスに出たあと補導されたり、バイトのあとで補導されたのもいるかもしれない

仁藤夢乃の断定的な語り口調に魅せられる人がきっといるんだと思います。ヒトラーも短いフレーズを断定的に語るのが演説の秘訣みたいなことを『わが闘争』に書いてましたしね(本人じゃなくて、ヒトラーの演説を分析した人が書いていたのかもしれない。忘れた)。これは独裁者に限らず、普遍的な演説のコツかと思います。

仁藤夢乃の場合、その典型は彼女の男女観です。まさにそこに反発したり、いかがわしく感じる人たちもいます。「そんな簡単じゃねえよ」「性別だけで、人類を二種に分類するんじゃねえ」「属性より個人を見ろ」ってことです。

歌舞伎町についても「性搾取が世界一深刻な町」と断定。こういうフレーズを思いついても、慎重な人なら、「私には性搾取が世界一深刻な町のように感じます」といったように、「事実かどうかは置くとして」といった含みのある表現にするってもんです。これならああも反発されることはなかったはず。しかし、こうやって断定するから、「それは大変、バスカフェをなんとしても継続しなければ」と思う人もいるのでしょう。

先日の一斉補導も、「性搾取が世界一深刻な町」の証拠であるかのように受け取るのがいそうですが、補導される少年少女も多層です。前回見た「不良層」も層のひとつ。美人局をやったり、酒を飲んで暴行事件を起こしたり、違法なクスリを売ったりやったり。必ずしも家出少年少女ではないので注意のこと。

「深夜、歌舞伎町にいるだけで不良だろ」という意見もありましょうが、不良層とは別の層を見てみましょう。

東京に住む人たちはご存知のように、東京では、夜の11時過ぎでも制服の高校生を見かけることがあります。頻繁ではないにせよ。稀ではないです。

私も東京の大学に入ってすぐに「東京の高校生はこんな遅くまで遊んでいるのか」と驚きましたが、クラブに遊びに行っているような高校生は着替えますから(今は年齢チェックが厳しくなってますが)、制服で帰ることはあんまりなくて、深夜の制服高校生は、学外の文化活動をやっていたりします。バンドだったり、演劇だったり、ダンスだったり。彼らは練習スタジオに平日に集まることがありますし、ライブハウスにもう出ていたりもしますから、休みの日の昼の部じゃなければどうしても帰りは遅くなるわけです。

東京の高校生は移動距離が長くて、たとえば葛飾区に住んで、偏差値高めの千代田区の高校に通っていて、武蔵野市にある劇団に所属していて、週に何度か稽古に行く、なんてこともありましょう。帰りは11時を過ぎます。

「ぼっち・ざ・ろっく!」のぼっちちゃんだって高校生にしてライブハウスに出てます。

第8話のライブシーン。

この時、ぼっちちゃんは、高校1年生、15歳だと思います。彼女が属する結束バンドの活動拠点は下北沢ですが、新宿というのもいるでしょう。ライブは10時までに終わって、そのあとメンバーでファミレスに行ってメシを食いながら反省会をやっているうちに11時を過ぎてしまう。

働き者の高校生たち

数で言えば、深夜の制服高校生でもっと多いのは、バイト帰りです。東京に限らず、都市部だと平日にバイトするのもけっこういます。バイトを禁止している学校もあるでしょうが、労基法の定めでは、夜の10時までは働けます。風俗営業店(キャバクラやホストクラブ)では働けないですが、酒を出す居酒屋やメイド喫茶でも10時までは働けます。

ただし、接客営業(この「接客」は一般的に使われる「マックの接客」「コンビニの接客」とは違い、とくに同じテーブルに同席するような業種です)として風俗営業の届けを出しているメイド喫茶もあるかもしれず、この場合は18歳未満はNG。そうじゃなければただの飲食店ですから働けますが、メイドカフェでは18歳未満を避ける店も多いようです。これはグレーな営業に足を踏み入れている店が多いためかと思います(エロい営業をしていると思っているのは仁藤夢乃くらいで、「おいしくなーれ」と客と一緒にポーズをしたり、写真を撮ったりするのも接客と言えなくはないことを指す)。いつ警察がそこまでを接客として摘発してくるかもしれず、その場合は無届の上に、18歳未満を雇い入れていると罪状が増えます。

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