松沢呉一のビバノン・ライフ

戦地から遠く離れた自宅にいてもロシア軍の幹部は殺される?—バルチザンと連携したウクライナの反撃-(松沢呉一)

 

対ウクライナ戦の英雄ドミトリー・リシツキーが自宅で殺害されたか

 

vivanon_sentence一昨日、銭湯で浴槽に入っていたら、40代と思われるガタイのいい中年が顔を洗っているところが見えたのですが、耳から血が流れています。けっこうな量で、首を伝っていくのが見えました。位置的に自分では鏡で見えないのではないか。

湯から出て近づいたら、耳の中から出ているのではなく、耳たぶの裏から出ているようです。

どちらにしても教えた方がよさそうだと思って、「血が出てますよ」と声をかけたら、カミソリで切れたそうで、自分でもわかっていたみたいです。ちょっと怖そうにも見えたのですが、満面の笑みでそう教えてくれました。

なんであんなところにカミソリを当てるのかわからなかったですが、毛の生え際をきれいにしたかったのかな。耳が邪魔してうっかり刃を滑らせたか。

銭湯を出て歩いていたら、銭湯からちょっと離れた舗道に、直径50センチくらいの血だまりがふたつ並んでいます。すでにいくらか黒ずんでいたのですが、まず間違いなく血です。昨年、副鼻腔炎で鼻血を大量に出していた時でも、ここまで多くはなかったです。

さっきの人か? 耳からの血が止まらなくなって死んだのかも。たぶん違うと思いますが、人間、どこで死ぬかわからんものです。

では、本題。ロシア軍による大攻勢はほぼ失敗したと結論づけてよく、それと同時に各所で、ウクライナ側の動きが活発になっています。

クリミア、そしてロシア国内で続く爆発—バルチザンの活動が激化しているっぽい」では、おもにロシア国内でのパルチザンについて見ましたが、もうひとつ追加してもよさそうな事件が起きてます。

3月26日に、空挺部隊の指揮官、ドミトリー・リシツキー(Дмитрий Лисицкий)が自宅アパートで死んでいるのが発見されています。ロシアメディアは猟銃で自殺し、その前から自殺をほのめかす発言をしていたと報じていますが、ウクライナ軍はドミトリー・リシツキーを殺害し、復讐を遂げたと発表。

ウクライナがロシア領内での攻撃を認める時はたいてい事実です。もしウクライナが殺害に成功したのだとすると異例な状況であり、ロシアとしては認めるわけにはいかない。というのも、ドミトリー・リシツキーの自宅は北コーカサスのスタヴロポリ地方(Ставропольский край)にあります。

 

 

ジョージアの北に位置し、ウクライナからは 400キロくらいある山間部です。そんなところの自宅にいるところを殺されたとあっては、ロシア軍幹部の誰もが自宅でくつろぐことはもうできないってことになります

この地方は少数民族が多いので、もしかすると、ウクライナ軍と連携した独立派の仕業かも。

ウクライナ側が復讐と言っているのは、ドミトリー・リシツキーは、2014年、イロヴァイスク(Ілова́йськ)でウクライナ軍の部隊を殲滅した第247連隊の大隊戦術グループを指揮していたためです。イロヴァイスクはドネツクにあって、この戦闘でウクライナ軍は千人以上が死亡し、ドミトリー・リシツキーは受勲していますが、ウクライナ軍が退避する合意がなされていたにもかかわらず、ロシア軍はこれを反故にして攻撃を加えたため、ウクライナ側は虐殺と呼んでいます。

仮に自殺だとしても、対ウクライナ戦の英雄が亡くなったことはロシア軍にとっては大きな衝撃でありましょう。

 

 

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