松沢呉一のビバノン・ライフ

軍事ブロガー爆殺事件は図らずもクレムリンとプリゴジンの対立の激しさを浮上させた—ロシア軍とウクライナ軍による即決処刑と拷問・虐待についての国連調査-(松沢呉一)

軍事ブロガー爆殺事件の続報—さらに連続するロシア国内での爆破・火災の事情」の続きです。

 

 

プリゴジンは、軍事ブロガー爆殺事件は国内対立によるものだと示唆

 

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どうしても気になって、軍事ブロガー爆殺事件の各国の続報をチェックしているのですが、確実な続報は「負傷者数が増えていること」くらいです。軽い怪我だったので、カウントされていなかった人がいたってだけでしょう。

容疑者のダリア・トレポアはモスクワから来たのではなく、サンクトペテルブルグ在住との報道も出ていますし、家に帰ったのではなくて、友人宅に潜んでいるところで捕まったとも報じられています。

その辺はどっちでもいいのですが、以下の報道で、もっとも注目したのは、ワグネルの創設者であるプリゴジンが、事件にウクライナが関わっていることを否定するような発言をしていることです。

 

 

 

 

このところ、プリゴジンはクレムリン批判を強めていて、これもその流れにあるだけで、はっきりとした根拠があるわけではないでしょうけど、ロシア当局が「ウクライナ軍が背後にいる」という見方をしていることを一蹴している点だけでも一聴の価値があります。

この番組内でも説明されているように、また、私も書いたことがあるように、プーチンは自ら爆弾を仕掛けて、チェチェンのせいにして国民の憎悪を高めた過去がありますから、自身にとって有利になると考えればそんくらいやります。

BBC等の報道でも、とくにこのところ、タタルスキーは、戦争での失敗をとらえて、クレムリン批判を強めていたことを報じています。前提としてはウクライナ侵攻を肯定ですが、表層を見ると、プーチン反対派と変わらないくらいに現政権や正規軍を批判していて、こちらは取り締まりが難しい。

もしクレムリンが主導したのであれば、ダリア・トレポアが「はめられた」「利用された」と言っていることも理解できます。「反戦派のためだと思っていたのに、背後にいたのはFSBの諜報員だった」など。

とくにクレムリンが関わっている場合、時間が経っても、真相はわからないでしょうが、今後も気にしておきます。

 

 

ロシア、ウクライナとも捕虜を不当に処刑と国連が発表

 

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今回もついでに「取り上げようと思って取り上げそびれていた話題」をやっておきます。

 

 

これは10日ほど前に、国連がロシア、ウクライナ両国で、捕虜を裁判にかけずに処刑する「即決処刑」が横行していることを懸念すると発表したことを報じたものです。

これまで「ビバノン」でも何度かウクライナ軍によるものと思われる捕虜の虐殺映像を取り上げましたが、おそらくそれらの例を含む、最大25名のロシア人捕虜が裁判なしで処刑されたことを国連は確認。また、ロシア側はウクライナ人捕虜を15名処刑、うちワグネルが11名のウクライナ人捕虜を虐殺したことを国連は確認。

ウクライナ軍の方が数が多いのは事情があります。

 

 

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