松沢呉一のビバノン・ライフ

プリゴジンの蜂起は1日で終了—いったい何があったのか-(松沢呉一)

 

プリゴジンはベラルーシへ

 

vivanon_sentence

このところ、あんまりリアルタイムの戦況に触れていませんでした。反転攻勢については、ウクライナ軍が相当に神経を使っていて、情報が出にくくなっているためです。ゼレンスキー大統領が言うように、着実に奪われていた領土を奪還しつつも、予想していたほどスムーズにはいかない。つまりは激戦が続いていて、ウクライナ側の損害も大きいことが想像できます。

そこまでは想像できるとしても、具体的なものが出てこないため、触れようがない。

という状態だったのですが、昨日になってまさかの展開で動揺していて、バイト中にも各国の報道をチェックしてました。

ロシア自由軍ロシア義勇軍連合が端緒を開き、国内の防衛が手薄であることを確認できたため、そのあとウクライナ正規軍がそのコースを北上して、一気にモスクワ陥落を目指すという展開を私は妄想していたわけですが、そんなことを言っている人はおらず、その上、それをやったのはワグネルだったとは誰が想像しましょうか。

内戦に突入していて、どこまで拡大するのだろうと思っていたら、あっさりワグネルは撤退した模様です。

以下は独「DW」の最新情報。

 

 

確認されている情報ではなく、ゲストの解説者の推測ですが、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介し、プリゴジンは免責されることが条件で亡することを飲んだ模様。また、プリゴジンには誤算があって、政権内に協力者がいて、クレムリンでも同時に蜂起するはずだったのが果たされなかったのではないかと言ってます。

たしかにそこは私もひっかかったところです。プリゴジンだったら、クレムリンの内部にも入れるでしょうし、プーチンとも面会できるはず。段取りをすべて決めておいて、その時に蜂起した方が確実です。それに対して、今回のやり方は、内戦がドロ沼化して何年もかかりかねず、ロシア国内の被害も甚大。プリゴジンはウクライナ占領自体は肯定しているのに、そちらにも影響が出ます。

そのため、今回の蜂起は、プリゴジンが激高したあまり、勢いでやってしまったのかと思っていたのですが、内戦を経てクレムリンを陥落させるのでなく、ワグネルの蜂起とともに、別の計画があったと考えると納得できます。

 

 

ロストフ、ヴェロネジ、そしてモスクワへ

 

vivanon_sentenceあっという間に終わってしまったわけですが、今後への影響は少なくないでしょう。それを見る前に、今回のおさらいをしておきます。

前史はいろいろあるのですが、直接の始まりは、23日のプリゴジンのこの発言。

 

 

バフムト撤退の際にロシア軍に地雷を仕掛けられていたとも言ってましたが、この時は半信半疑でした。いかに激しくショイグを罵倒しているにしても、功績のあるワグネルを攻撃して、政府軍にとって得をすることはない。地雷ごときでの被害はたいしたことがなく、撤退後のウクライナ軍に向けた地雷を勘違いしているのではないかと私は思ってました、

ロシア政府はワグネルを政府軍に登録する命令を出し、プリゴジンは拒否。ワグネルに対して砲撃があったとすると、その報復か。

これが事実だとすると、素直にプリゴジンは屈服すると思っていたのかもしれないですが、プリゴジンはロシア軍に対する武装蜂起を宣言し、すぐさまロストフ州(Ростовская область)を制圧。おそらく計画通りだったのでしょうが、部隊の一部は北上して、ヴォロネジの軍事施設や行政施設を占拠します。

ロストフ州からモスクワまでは900キロくらいで、ヴォロネジはその中間地点。

 

 

next_vivanon

(残り 759文字/全文: 2342文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ