松沢呉一のビバノン・ライフ

現実とずれた仮想を前提にした論は無効—上野千鶴子の粗雑な論をありがたがるのはもうやめれ[2]-(松沢呉一)

破綻のない説明よりも、破綻した糞理論が大事だってか—上野千鶴子の粗雑な論をありがたがるのはもうやめれ[1]」の続きです。

 

 

自分の考えを現実よりも上位に置く

 

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今回も以下の動画に沿って「上野千鶴子氏に聞いた」の粗雑さを見ていきます。

 

 

「公的な場面で公人が他人の見た目を取り上げること」はマナー違反と考えるのが適切なのに、上野千鶴子は差別の問題としました。この段階から間違っていて。おかげでこういう間違いを推し進めるとどれだけ悲惨なことになるのかをわかりやすく見せてくれます。

上野千鶴子氏に聞いた」より。

 

たとえば妻やガールフレンドと一緒に歩いている男が、前から来る別の女を見て、『お、美人だな』とか『お、ブスだな』とか何気なく言ったりするでしょ。その瞬間に、女は一元的な序列のどこかにサッと位置づけられてしまうことになる。そんなこと頼んでもないのに。当然、不愉快ですよね。男というのは、そうやって女をランキングする権力が自分にあると無邪気にかつ傲慢に信じているのです。

 

戦前の話をもってこられても。

クレアさんは実感がないようですが、つきあっている相手といる時に、「あの子、きれいだな」といった発言をしたことが私にはあります。それ以上に一緒にいる女から「あの男の子、かわいい〜」「あそこにいる男の人、カッコよくね?」みたいな言葉を耳にしてきました。「ああ、あの男の子だったらオレもつきあいたい」などと返す私だから言えるのであって、相手によっては一切言わないこともありそうですが、それは男も同じ。

私の経験もまた日本の標準とは言えないですが、同じくこんな男と女の関係しか体験したことがなく、自分の周りにもそんな人しかいなかったらしき上野千鶴子の理解もまた日本の標準ではあり得ません。なんでそんな経験を日本全体に広げられるのかな。

亡くなった南智子だったら、「私自身の体験では」「他の方は存じ上げませんが」と枕につけて、自分の体験や自分の見聞は例外的なものでしかないかもしれない可能性を示唆したでしょう。しかし、上野千鶴子は、狭い見聞を日本の標準であるかのように扱います。

自分の見聞を自分の見聞として語る南智子と、自分の見聞だけで世界を語る上野千鶴子と、どちらが人間として信用できますかね。その上、上野千鶴子は、今この日本で一般的とは言えない男女関係を前提に個人を叩くのです。

なぜこうなるのかと言えば現実がどうなっているのかを調べる作業をしないのでしょう。多くの人は意見を言う場合、まず現実がどうなっているのか調べます。ネットで検索したり、本を読んだり、人に聞いたり。そこが間違っていると、意見が成立しなくなります。その調べ方が浅くてミスることもあって、できる限り調べた方がいい。

また、意見は事実を知ってから出てくるものだったりします。直近出した例で言えば、「日本はルールが細かくて厳しい」という見方は、その中にいる私は実感しにくくて、もっぱら外国人による日本の感想を拾っていくことで気づかされたものです。「たしかにこの点はそうだな」「そっか国外ではこんなルールはないのか」と。それを書く場合にも、私は改めてそれを指摘している具体例を探したことをご確認ください。

しかし、糞理論を振りかざす人たちは、自分が言いたいことが先にあって、それに合わせた都合のいい「現実」を持ち出します。

 

 

上野千鶴子はルックスだけで東大教授になったらしいですよ

 

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クレアさんは、以下の上野千鶴子の決めつけに対して、「この理論、いっこもわかんない」「偏見の塊」「すごい失礼」「メチャクチャ」と言ってます。

 

「(略)女の場合は一元尺度でランクオーダーされるのに対して、男は多元尺度なんです。たとえばイケメンじゃなくたって、学歴とか地位とか、そういった尺度が男にはある。男の尺度の中で一番強力なのは金力(稼得力)であり、イケメンかどうかなんてことは、男にとってはマイナー尺度です。つまり男女のランクオーダーは非対称ですから、『女だって同じことをやっているだろ』とはなりません」

 

なーるほど、女である上野千鶴子さんは、その美貌だけで東大教授になったんですね。髪の毛を赤くして頑張りましたね。たしかにこの「上野千鶴子氏に聞いた」を読む限り、大学教授に相応しい能力があるとは思えません。ルックスのみで成り上がったのです。

んなわけないでしょうが。

 

 

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