松沢呉一のビバノン・ライフ

法より、客観的事実より、データより、「私の感覚」が上位という仁藤夢乃の世界観—仁藤夢乃の発言は信用できない[余談編2]-(呉一)

ジャーナリストが「憎悪」を「ぞうあく」と読み、議員が「手当」を「てとう」と読む—仁藤夢乃の発言は信用できない[余談編1]」の続きです。

 

 

誤用の法則

 

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一般論ですが、物書きは誤用や漢字の間違いが少ない。校正を経るためです。大先生でも、編集者や校正担当は忖度してくれないので、使用頻度の高い言葉をいつまでも間違い続けることはあまりない。

たとえばプロの物書きで間違う人は少ないのに、一般の人がよく間違っているのは「予想」です。文字通り、「未来に起きることを予め推測すること」ですから、すでに起きたことを推測する場合は使えません。「第三レースの結果を予想する」はいいのですが、「第三レースが荒れた理由を予想する」は使えない。

「この事件の犯人はAだと予想する」はおかしいとして、「これから警察の発表がある。私は犯人はAだと予想する」となると、犯罪は過去でも、警察発表は未来なので、ギリギリ使えなくもないですが、ここは「推測」「想像」「推理」の方が適切です。

私もかつて間違って使うことがあって、若い頃に、校正ではなく、知人のライターに指摘されましたが、一般の人は指摘される機会があまりないでしょう。事実、頻繁にこの誤用を見ます。

それでも、原稿で一度も使ったことのない誤用や漢字間違いは直される機会がないですし、読み間違いまでは校正の範囲ではないので、一般の人なみにやらかしてしまいそうです。

つまり、人に教えられることが訂正する重要な機会になり、その機会が少ないと間違い続けるという法則です。当たり前ですが。

「云々」「未曾有」は使用頻度が低いため、注意される機会も少なくなりますが、「手当」は使用頻度が高いですから、間違っていることを周りが気づいても注意しづらかったのではなかろうか。

「住宅てとう」と言っているのを聞いても、まさか間違いだと思わず、「専門用語でそういう読みがあるに違いない」と思ってしまって注意できなかったか、注意されても直さなかったか。事実、国会答弁でも、わざわざ岸田首相が「てあて」と繰り返しているのに気づかなかったか、気づいても素直に間違いを認めず、さらに恥を上塗りしたのか、どちからだと思えます。

どちらにせよ、独善的な人、あるいは独善的と思われている人がやる傾向がありそうです。

※誤読&難読漢字研究会編著『この漢字、正しく読めますか? 』 田島麻衣子議員は、こういった本を読んでおくと少しは役に立つかもしれないけれど、「手当」を誤読する人がいることを想定するのは難しいので、たぶん出てない。この本は「みぞゆう」のあとに出たもののようで、表紙に出ている例の筆頭は「未曾有」です。残りも難なく読めました。よかった。

 

 

再びコミュニティノート

 

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この法則は、誤読以外にも適用できそうです。

仁藤夢乃が売防法や自分が推奨する国外の法律について無知を晒すのはただのうっかりでは済まない感触があります。他でも多数おかしな発言を繰り返していますから。いちいち適当なことを書いても支持者はついてくる、もしくは支持者たちは間違いに気づくことさえないとたかをくくっているのかもしれない。実際、法律の間違いに気づけるような人は仁藤夢乃を信用することはないかと思います。条文を確認するような人も仁藤夢乃を信用しない。仮に気づいたとしても指摘できない。年中やってますからキリがなく、注意したらブロックされそうですしね。

ちょっと前に書いたように、Twitter(暫定)でコミュニティノートがついたら、その内容が適切である限り、ありがたく受取ればいい。「タダで校閲をしてくれてありがとう」です。

具体例を出したように、間違ったノートがつくことはたしかにあって、その場合は反発していいのですけど、現在、コミュニティノート自体に文句を言っている人は説得力がないです。

たとえばこの沖縄タイムスの記者。

 

 

 

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