松沢呉一のビバノン・ライフ

美術家の強制わいせつにより慰安婦追悼モニュメントが撤去された—二審判決を控えた尹美香に対して新たな告発も-(松沢呉一)

慰安婦追悼モニュメントを制作した美術家・林玉相が強制わいせつで告訴され、その作品が撤去された

 

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今月の20日に元正義連代表の国会議員・尹美香の二審判決が出ます(二審の結果はこちら)。一審判決同様、実刑は免れる可能性がありますが、大法院(最高裁)では実刑判決が出るだろうと目されています。韓国の司法制度が大きく関わっているためです(後述)。

また、慰安婦問題は、尹美香が起訴されたことで大きく社会の見方が変わっていて、10年前だったら許されなかった「慰安婦問題は、尹美香らが私腹を肥やし、北朝鮮の意向に沿って日韓友好を潰すための策動である」という主張がおおっぴらになされ、その趣旨の本も出るようになっています。その変化を踏まえて、二審でも一審以上に厳しい判決になるとの見方もあります。

ここ数日、韓国では、そのことと直接関わるわけではないにせよ、今の韓国を象徴するような出来事が起きています。

韓国の報道。

 

 

朝鮮日報」の日本語記事はこちら。前後編からなるこの記事は7月28日のもので、作品が破壊、撤去される前のものですが、ここに至るまでの経緯が詳細に書かれています。

ざっとまとめます。2013年、「民衆美術界の巨匠」と言われる画家、彫刻家の林玉相(イム・オクサン)の研究所スタッフであった女性Aが強制わいせつを受けますが、当時は沈黙。

2016年、ソウル・南山の旧韓国統監官邸跡地に「記憶の場」という慰安婦を追悼する公園が設立されます。ここに林玉相はふたつのモニュメントを設置します。

林玉相がそのような作品を作り、性暴力を語るのを見たAさんは今年2月に告訴し、検察は起訴、7月6日の初公判で、林玉相は容疑を認め、検察は懲役1年を求刑。

これを受けて、「記憶の場」に性加害者の作品を設置しておくことに対しての疑問の声が上がり、美術界からは「親日の美術家の作品が美術館から撤去されてきたのに、強制わいせつ犯が作った作品を残す理由などない。歴史的空間に建てられた林玉相被告の作品はすべて撤去しなければならない」との意見も出始めます。

性犯罪に対しては言葉を極めて批判する慰安婦団体は、林玉相の性犯罪には沈黙していましたが、逆に作品の撤去には反対。しかし、9月になってソウル市当局は強制的に撤去(破壊)。

というお話です。

 

 

慰安婦ビジネスの終焉

 

vivanon_sentenceたとえば林玉相が万引きで捕まった、大麻で捕まったというなら、「作品は別」と言えるでしょう。私もそれだったら、「撤去まではしなくていいのでは?」と言いそうですが、性犯罪ですから、さすがに別とは言えない。

判決が出るまで待つべきという意見もありましょうが、本人が罪状を認めていますから、事実関係では争いはありません。「実刑だったら撤去、執行猶予がついたら撤去しない」なんて話ではありません。

むしろこの場合は、慰安婦支援団体こそが撤去を求めていいはずなのに反対したのは、身内の性犯罪は容認ということであるとともに、尹美香の詐欺容疑に続く不祥事で慰安婦ビジネスが完全に終わることを恐れて、意味のない抵抗をしたのだろうと想像できます。悪あがきです。

とりわけこの場合は市が管理する公園であり、制作費やギャラを支払っていましょうから、市が撤去の判断をする権利もあります。

慰安婦の施設「ナヌムの家」にも林玉相の作品が設置されており、こちらも遠からず撤去されるのではなかろうか。

※「朝鮮日報」より、「ナヌムの家」に設置された林玉相による「大地-母」

 

 

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