松沢呉一のビバノン・ライフ

病院でも女子校でもBBCでも犯行は行われた—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[7]-(松沢呉一)

イアン・ハンプトンとジョン・ライドンが語るジミー・サヴィル—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[6]」の続きです。

 

 

「噂は聞いていた」は本当か

 

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前回見たように、スパークスのベーシスト、イアン・ハンプトンセックス・ピストルズジョニー・ロットン(当時)、また、ジミー・サヴィルの死後にジョン・ライドンにインタビューした人物も、生前からジミー・サヴィルについての悪い噂を耳にしていたように、放送関係者や音楽関係者の多くが噂として知っていたことは間違いなさそうです。

その内容はただ10代の少女たちとセックスしまくっているというものから、刑事罰に相当するものまで様々で、児童ポルノを収集していたいう噂もありました(「英警察の捜査報告書(Giving Victims a Voice)」)。これが事実だったのかどうかは不明。

独立調査委員会の報告書(THE DAME JANET SMITH REVIEW REPORT)」でも、複数のBBC関係者が噂を聞いて「10代少女とカジュアルなセックスをしている」と受け取っていた旨を語っています。16歳以上と同意の上でセックスをしていたところで法には触れないですから、これが本当であれば局員が対応しなかったのは無理からぬことでしょう。あくまで「本当にその程度であれば」。

会社員がプライベートの領域で、キャバ嬢とセックスしまくろうと、ナンパしまくろうと、懲戒処分できるはずがないのは「懲戒の基準」シリーズで見てきた通りです。トラブル回避のために同僚や上司が注意するくらいのことはあっていいとして。

企業と社員の関係よりも、放送局と出演者の関係の方が緩いですから、プライベートについて法に触れない噂を聞いたところで、「知らんがな」になってもおかしくない。

しかし、法に触れる行為があったと知ったり、BBCの敷地でセックスしたことを知ったとあれば話は別。

上級職はもちろん、下級職であっても、個人の責任の有無を判断する基準はこの辺にあって、だから、もっと踏込んだ情報を知っていたとしても、「10代の少女たちとセックスしているという噂は耳にしていた」というところでごまかした局員もいたのだろうと想像します。

 

 

女子校でもやりたい放題

 

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証明するのは難しいですが、嘘をついている局員がいるであろうと推測できる根拠はいくつかあります。

ひとつは警察がジミー・サヴィルを取り調べたことが何度かあることです。70年代、ジミー・サヴィルが出入りしていたダンクロフト(Duncroft)女子校(発達障害などのある生徒の学校で、日本で言えば中高か)で、わいせつ事件があり、ジミー・サヴィルは取り調べを受けていますが、証拠不十分で不起訴になっています。

これとは別の容疑で告訴した人はいたようなのですが、有罪になったケースはなし。

こういう話はどこからか漏れますから、BBC内部でも知っていた人はいそうです。ただ、不起訴になったことで、かえって「濡れ衣だった」になった人もいそうですが。

なお、ジミー・サヴィルの死後、ダンクロフト女子校の元生徒22名と学校を訪れていた1名が被害を受けたと証言し、計46件の性的暴行があったと地元警察は発表(「英警察の捜査報告書」では43件になっていて、3件は認められなかったようですが、人数は同じ)。

 

 

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