松沢呉一のビバノン・ライフ

出向の件に一切触れないフジテレビの検証に呆れた—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[15]-(松沢呉一)

テレビ局の検証番組に欠けている視点—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[14]」の続きです。

 

 

「週刊フジテレビ批評」特別版の呆れた姿勢

 

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とっとと終わりにしたいのですが、フジテレビが「週刊テレビ批評 特別版」として検証番組をYouTubeでも公開してましたので、これも取り上げておきます。

 

 

フジテレビは、ジャニーズ事務所に過去に何人も職員を出向させていたくらいで、もっとも癒着している放送局であり、その関係が報道しない判断に影響した可能性があります。それをどう検証したのかが最大の見どころです。

結論を言うと、まったく触れていませんでした。

私は番組を観て気づいたのですが、放送直後から多くの人が指摘してましたし、いくつかのメディアも報じています。

以下は2023年10月24日付日刊ゲンダイ」より。

 

今後については、「どんな対象であれ、取材すべきは取材し、報道すべきことは報道していく。この当たり前の基本をあらためて徹底してまいりたい」(渡邉氏)、「今回のご指摘を真摯に受け止め、放送局としての役割を果たしていきたいと思います」(立松氏)とした。しかし、話す内容はどれも明らかに台本通りで、セリフは棒読み。これで禊は済んだかのような物言いだった。しかも、フジテレビはジャニーズ事務所とズブズブの蜜月関係にあったことを示す“不都合な真実”については検証番組で一切触れていないのである。

これまで映画「THE有頂天ホテル」(06年)や「ザ・マジックアワー」(08年)といった三谷幸喜氏の作品を多数手掛けたほか、ジャニーズ事務所とは映画「NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE」(香取慎吾主演)、連続ドラマ「ラッキーセブン」(松本潤主演)などを担当してきたフジテレビの敏腕プロデューサーである重岡由美子氏が、現在はジャニーズ事務所の取締役であるという事実だ。重岡氏は18年に旧ジャニーズ事務所に現役出向し、22年3月にはフジテレビを希望退職。同年4月から、旧ジャニーズ事務所専任となり、同社の取締役に就任している。

 

長くなるのでここまでとしますが、出向していたのはこの人だけではないようで、まさにズブズブ。

これに一切触れていない点で、本気で検証する気などなく、本気で反省する気もなく、これまで視聴者を誤魔化し続けてきた手法をこれからも駆使することを宣言した番組だったと断定していいでしょう。

でも、その手法はインターネットの時代にはもう通用しないと思いますよ。

 

 

ズブズブの関係を想像させる元編成幹部の発言

 

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視聴者を馬鹿にした検証でしかないのですが、いくつか確認しておくべき点がありました。

まず報道局長は渡邊奈都子氏。女性です。出向してジャニーズ事務所の取締役に就任した重岡由美子氏も女性です。日本テレビの検証でコメントしていた田中東子・東京大学大学院教授が信じているらしき「女が決定権を持てばこんなことにはならない」との考えはここでも否定されましょう。男も女も一緒です。女だって、究極、自分が損をすることは避けるのだし、こんな検証で視聴者の目をくらませようとするのです。

続いて、元編成幹部の発言。

 

メディア業界にいた人は個人差はあれど、それなりに認識していたと思う。この件を事務所の人たちの前で話題にしたこともありましたが、事務所の方からは深い言及はありませんでした。

 

こんな話は初めて出てきました。

フジテレビとジャニーズ事務所の関係の強さを物語っているような気がしないではない。

そりゃ出向させた社員がいますから、そのつながりから、食事をしたり、酒を飲んだりする機会は多かったでしょう。

どっちが払うのか知らないですが、誕生日ともなればひとり8千円くらいは使いそう。一般社団法人でも税金が原資の金でひとり8千円を超える誕生日会をやっても東京都は許すのだから、テレビ局と芸能プロではひとり万単位か。

仮に、ジャニーズ事務所の関係者が「ここだけの話にして欲しいですが、社内でもその噂はあります」とかなんとか答えたとしたら、取り上げましたかね。取り上げなかったと思いますけどね。

✳︎2023年10月24日付「日刊ゲンダイ

 

 

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