松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシアのテロ事件について再度の犯行声明でISISの犯行は確定—テロの怖さとバイアスの怖さ-(松沢呉一)

モスクワ州クロッカス・シティ・ホールでの乱射事件はISIS犯行説が浮上するも、なお確定せず」の続きです。

 

 

ロシアがウクライナ犯行説を堅持したことに反発したか、ISISが再度犯行声明

 

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ロシアは事前に米国から情報を得ていたのに活かすことをできず、100人以上の命が失われました。そのことを認めるとメンツが潰れ、国民は反発しますから、ウクライナがやったという方向で押し切ることにしたようです。実際にやった側としては認められず、ISISは再度犯行声明を出しています。

 

 

実行犯は4名で、現場で射殺されたのはいなかったよう。訂正します。

現在死者は133名で、入院した重症者もいますので、さらに死者数は増えそうです。先日、フライパンの油が手の甲に垂れてしまい、水ぶくれのあときれいに皮膚が剥げ、今もヒリヒリしてます。3センチ大でもメチャ痛いですから、全身火傷は辛いと思います。「そんなもんと比較すんな」と言われそうです。すいません。

上の動画にあるように、実行犯側からの映像もISISは公開し、これが捏造とは考えにくい。顔写真は顔を隠していて、これを出したのはISIS系アマーク通信で、どの段階で顔をぼかしたのかわからないですが、捕まった犯人との照合は可能でしょう。各政府機関やメディアが今やっているところか。

よくよく考えてみると、ISISがテロを計画しようとしているとの情報を伝えたところで、ロシアが「それは一大事。情報提供ありがとうございます」と素直に受け取るはずがなく、米国はこうなるだろうことを予想していたはずです。事実、ロシアは「脅迫だ」として、これを突っぱね、今回の惨事となりました。

しかし、伝えておいたことで、ロシアがウクライナ犯行説をぶち上げることが難しくなります。それでも、ロシア政府は、ウクライナに対する国民の憎悪を掻き立て、耐乏生活を国民に強い、さらなる増員を肯定する根拠に利用することにしました。こうなるともう撤回はできない。

さすがにロシア国外では通用せず、ロシア国内でも反発する人たちはいるでしょうが、何がなんでもプーチンが正しいとするのが国民の大半ですから、そこだけをプーチン政権は見ています。

そうなることを見据えて、米国は警告を出し、ロシアの発表は信用ができず、事実を冷静に判断できない国であることを明らかにしようとしたのだろうと思います。米国の諜報網、恐るべし。対してロシアの諜報網はスカスカ。

ISISとしては声明を2度も出しているのに、足蹴にされたのですから、わからせるまでやるでしょ。ロシアは情報収集能力が弱く、テロにも弱いことがわかりましたし。

 

 

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