松沢呉一のビバノン・ライフ

CIAOちゅ~るのパクリとチーズケーキのパクリ—文化盗用とパクリ[5]-(松沢呉一)

ミャンマーのパクリ曲に対するミャンマー人と日本人の反応の違いはどこから生じるか—文化盗用とパクリ[4]」の続きです。

 

 

娯楽の殿堂・いなば食品

 

vivanon_sentence

いなば食品は、CIAOちゅ~るのごとくニュルニュルとオモロいネタを次々と提供して、雑誌メディアやインターネットを通じて、殺伐とした社会に潤いを与えています。

いなば食品が提供するネタは多岐に渡り、ほとんどの人がどこかしら食いつくところがあります。猫好きは、猫嫌いの稲葉優子会長と稲葉敦央社長が飼っている猫が虐待に近い状態にあることに怒り心頭でしょう。食品の安全性に敏感な人は工場が食品衛生法に反していたことを知っていなば食品の製品を口にしたくなくなったでしょう。労働問題に関心のある人は労働基準法に抵触する事例が次々と明らかにされてコレクションが充実してましょう。

私としては、根拠がないまま、かつジャニーズ事務所では女性が実権を得ていた事実を見ないまま、テレビがジャニーズ問題を取り上げなかった理由として「テレビ局で決定権を持つ人の中に男性が非常に多かった」と言い出した大学教授を筆頭に、「女が実権を持つとすべてよくなる」とのファンタジーを信じ、恥ずかしげもなく公にデタラメを吹聴する人々の理想を稲葉優子会長が見せてくれたことに感謝します。

部下に引っ越しの手伝いをさせるくらいのことは今でもいろんな職場でありそうですが、日常的に、トイレを含む自宅の清掃、ペットの世話、出勤や買い物の付き添いを社員にさせる企業は珍しいかと思います。腐ってカビが生えた肉じゃがの始末をさせられる社員の不憫さ、ちょっと離れただけでディオールの財布を買わされる社員の悔しさを想像して、同情する意見も見られます。

私も、今回、入社を辞退した人々に対しては、「大事な時期を無駄してかわいそう」と心底同情しますけど、給料がいいからと、こんな会社にいて、労働基準局に訴え出ることもなく、メディアに垂れ込むこともなく、働き続けた社員もどうかしていると思うぞ。会長や社長の言いなりになって、部下を不当に異動したり、自宅の掃除を命じたり、食品衛生法違反があったことを知りながら商品を販売したりして会社維持に加担したのだし、10年20年とそんなところにいたら、会長、社長の体質を内面化してましょう。

この騒動で退社するのも出てくるかもしれないですが、10年単位でいなば食品にいた人材を拾う企業はまず再教育する必要がありそうです。

✳︎いなば食品のサイトより、「ライトツナ」。ちゅ~るは買ったことがないですが、ライトツナはいっぱい買ってます。タイカレーの缶詰も何度か買ってますが、一食分としては量が少ないのよね。レトルトの方がいいです。

 

 

加工食品の権利を確認する

 

vivanon_sentence

CIAOちゅ~るは画期的だと思っていたのですが、英国メーカーのアイデアをパクったらしい。ゲスいな。

どういう経緯でそうなったのかよくわからないですが、ただアイデアを盗んだところで、何の法律にも触れないでしょう。加工食品(CIAOちゅ~るは加工食品の範疇ではないかもしれないですが、事情は同じ)の知的所有権は、製法に関する特許、店舗名や商品名の商標、パッケージや宣伝用の表現物についての著作権があるだけで、あとは不正競争防止法に引っ掛かることがあり得るだけですから、それを避ければパクったところで法には触れません。

この後の展開のため、このことを改めて確認しておきます。

最近でいえば、大阪りくろーおじさんの店」のチーズケーキを三重県のコイサンズ社が運営する店舗「アミーゴ」がクリソツなチーズケーキを販売していることが話題になってました。

 

 

 

next_vivanon

(残り 1200文字/全文: 2790文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ