河村をも加速させる森井マジックの可能性。タイムアウトをとられても断ち切らせなかったパスワーク<天皇杯>

©️B-CORSAIRS
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敗戦の影が色濃いからこそ、あの試合で見えた希望の光はまばゆかったのかもしれない。
負けたなかにも、希望はあった。
1月10日の天皇杯。宇都宮ブレックスをホームに迎えた横浜ビー・コルセアーズは、3Qの8連続得点で4点差にまで迫る奮闘を見せたものの、最終的には宇都宮に敗れてしまった。
「本当に悔しい」
試合後の河村勇輝の言葉にも表れているように、ビーコルにとっては苦い敗戦となった。ベスト4で力尽きた昨シーズンの借りを返そうと、チーム一丸となってこの大会に挑んでいた。それなのに、ベスト8で涙を飲むことになったのだから、ショックは大きい。
ただ、「今まで温めてきたことや、いろいろなアジャストメントや戦術を一気に使って、何とかこの一発勝負をものにしようと」挑んだ青木HCの采配によって、新たな希望が生まれた。希望の光が見えたのは、4Qの残り5分40秒を切ったところからだったーー。
ビーコルの高速パス回しが始まった。
ドライブした河村から始まり、須藤昂矢、森井、もう一度河村、そして最後はジョシュ・スコットへ。
最初に河村の手をボールが離れた瞬間から、スコットの手に渡るまで、間髪入れずにパスが回った。宇都宮の選手たちはそれを眺めることしかできず、スコットがゴールを決めた瞬間に、リードしていた宇都宮の佐々宜央HCがタイムアウトを取らざるを得なかったほど。
宇都宮にとってはまだ11点のリードがあったが、「試合の流れを変えかねないスーパープレーだ」と宇都宮の佐々HCが判断したたからだろう。
だが、タイムアウトが終わってからも、ビーコルの高速パス回しは止まらなかった。
次のオフェンスでは、河村、森井、スコットと渡り、宇都宮はゴール下でシュートに行くスコットをファールで止めるしかなかった。
流れるようにパスが回った最大の理由は、ハッキリしている。
普段であれば、一緒にプレーすることがほとんどない河村と森井健太という2人のPGが同時に起用されていたからだ。いわゆる2ガードシステムが採用されていた。以下は試合後の青木HCのコメントだ。
「みんなには内緒にしてほしいんですけど(笑)、うちの今の生命線は『3Pとトランジション』なので。
3Pが(確率よく)入っているときは、自分たちのプラン通りに比較的余裕を持ってプレーできるのですが、今日みたいな(3Pの成功率が著しく低い)試合ではとにかく、ディフェンスで何かを変えないといけない。(良い)ディフェンスからのトランジションで決める点数は、うちの大きな武器の1つですから」
試合後にそう振り返っていた青木HCは、2ガードシステムを採用した意図をこう説明している。
「点差が離れ、どうしても追いつかないといけない時間帯で、2ガードにして、河村選手の得点力、森井選手のゲームコントロールと背中で見せるディフェンスの圧。これらによって、この展開を変えたいという気持ちでした」
このシステムについて、当事者である河村はこのように振り返っている。
「健太さんが1番ポジションで試合に出ることによって、ディフェンスの強度や、ボール運びやゲームのコントロールを任せることができるので。僕はその分オフェンスにフォーカスして、自分がフル(パワー)でアタックできます」
2人のPGと起用法による特長をまとめると以下のようになる。
森井が1人でPGを務めるとき:森井の守備力と、攻撃時のゲームメイクがチームの強みになる。
河村が1人でPGを務めるとき:河村の得点力を筆頭にした攻撃力と、河村のゲームメイクがチームの強みになる。
2人が同時に出場するとき:守備での負担と攻撃時のゲームメイクを森井が引き受けることで、河村が攻撃にさらに力を注げる。
森井のゲームメイクという土台の上で、リミッターを外した河村の攻撃力が猛威を振るうことで、ビーコルの得点力が上がるのだ。
だからこそ、指揮官は河村の攻撃力をたたえつつも、森井を称賛する。
「森井選手のゲームコントロールを本当に信頼しています。ゲームをコントロールし、(チームメイトを)良いポジションにつかせながら、スペースよくプレーできるというのは、1つの強みだと思っています。
(あの時間帯に)河村選手、須藤選手、ユトフ選手、スコット選手と正しいスペースを使わせながら、戦えていたというのは、森井選手のコントロールのたまものかなと」
実際、大半の時間で2人が同時にプレーしていた4Qのスコアは21-19で、ビーコルが宇都宮を上回っていた。優勝候補の一角で、東地区で2位につける宇都宮相手にも攻撃力で脅威になっていたわけだ。
何より興味深いのは、河村が以下のように話していることだ。
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