松沢呉一のビバノン・ライフ

ローズ・パレードに出た日本のマーチングバンド群は揃って踊る—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[3]-(松沢呉一)

京都橘高校吹奏楽部が台湾で旋風を巻き起こした理由—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[2]」の続きです。

 

 

ローズ・パレードに参加した日本のマーチングバンドを確認する

 

vivanon_sentence今回も「京都橘高校吹奏楽部」は「橘高校」と略します。

前回見たように、米国最大のマーチングバンドの祭典であるローズ・パレードにおいて、「橘高校」は他に類のないパフォーマンスを見せてました。この時の「他」が指すのはローズ・パレードに出ている全米のマーチングバンドであり、それらのバンドがローズ・パレードで披露していたパフォーマンスとの比較として「他に類がない」。

その範囲に限って言えば、誰もやらないことをやっている「橘高校」は素晴らしいと言えるのだけれど、「橘高校」だけでなく、ローズ・パレードに出る日本のマーチングバンドもことごとくダンスと言っていい振り付けをやっています。その上で「橘高校」の素晴らしさを私は見出していますが、そもそもなぜ日本のマーチングバンドはダンスをするのか。

ここんところの見極めがすぐにはできなくて、この2週間ほど大量の動画を観ていたわけです。そこから見えてきたものを説明する前に、演奏者までがダンスをするのは「橘高校」の専売特許ではないことを確認していただきます。

今回初めて「橘高校」のパフォーマンスを観た人(私もそうですが)には、勘違いしている人たちも多いでしょうけど、日本のマーチングバンドが特別にすごいってわけではないです。ある条件下ではすごいと言えても、トータルで見た時にはやっぱり米国がダントツで世界のトップです。もちろん、その上で好き嫌いはあって、私は日本のマーチングバンドの方が好きです。

前回書いたように、ローズ・パレードは1890年に始まりました。130年の歴史。1965年に日本から初めて天理高校吹奏楽部が参加し、以来、数年に一度日本から参加しており、2010年以降は毎年参加していて(2021年はローズ・パレード自体が中止。2022年の今年は予定していた高校が辞退)、「橘高校」は2012年と2018年の二度参加。

なお、今回「橘高校」と交流があった台北第一女子高校楽隊は「橘高校」よりずっと早く1986年にローズ・パレードに参加してます。あっちの方が先輩。

では、この10年を振り返ってみましょう。

トーナメント・オブ・ローゼズのサイトより、ローズ・パレードのロゴ。スポンサーはホンダです。日本のマーチングバンドが毎年参加するようになったのはスポンサーと関係しているのでありましょうか。名称には変遷があるようですが、今現在、ローズ・パレードはパレードを指し、トーナメント・オブ・ローゼズ(TOURNAMENT OF ROSES)はローズ・パレードとローズ・ボウル(ROSE BOWL GAME)を合わせた総称として使うようです。

 

 

2011年・北日本選抜グリーンバンド

 

vivanon_sentence

2011年は北日本選抜グリーンバンドです。

 

 

北日本選抜グリーンバンドの詳細がわからないですが、グリーンバンドという名称は、吹奏楽の世界で、地球環境について考えることを目標にしたグループが名乗るもので、日本では仙台から始まっていて、この「北日本」も仙台が中心だろうと思います。

バックですり足をするところで大歓声。バックで進行はけっこう珍しい。

 

 

2012年・京都橘中学高校選抜グリーンバンド

 

vivanon_sentence2012年は京都橘中学高校選抜グリーンバンド

 

 

ローズ・パレードだけの動画もあるのですが、同じ遠征で行った前年暮れの演奏も入っている動画にしました。ディズニーランドだと思いますが、ここでの「シング シング シング」が泣けるくらいにいいです。夜だからですし、背景の照明が歓楽街っぽいからです。

ローズ・パレードで、カーブを抜けたあとの「シング シング シング」もいいです。道路が広いですから、カーブは小走りにならざるを得ず、演奏が乱れます。でも、立て直して「シング シング シング」に突入。

この年に限らず、ダイジェスト映像で、このカーブを入れていることが多いのは、カーブの処理に個性が出るのと、そのあと立て直してからが見どころだからです。ここがもっとも観客が多い。

 

 

2013年・出雲選抜グリーンバンド、

 

vivanon_sentence2013年は出雲選抜グリーンバンド

 

 

出雲地方の6つの高校の混成で、卒業生も入っているようです。島根県立出雲商業高等学校吹奏楽部は「橘高校」のフォロワーで、この選抜チームにも多数参加しているはずです。

 

 

next_vivanon

(残り 1369文字/全文: 3433文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ