松沢呉一のビバノン・ライフ

楽器を持ったまま踊る日本と楽器を持ったままでは踊らない米国の違い—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[4]-(松沢呉一)

ローズ・パレードに出た日本のマーチングバンド群は揃って踊る—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[3]」の続きです。

 

 

ジェファーソン・デイヴィス・ハイスクール・マーチング・バンド

 

vivanon_sentence米国のマーチングバンドもYouTubeで観ていますから、その中から好きなバンドが出てくるわけですよ。まだ観てないバンドが山のようにあるので暫定ですが、現時点で一番好きなのは、アラバマ州モンゴメリーのジェファーソン・デイヴィス・ハイスクール・マーチング・バンドです(ジェファーソンがジェフと略されていたり、マーチングがなかったり、他の言葉が入っていたり、表記はさまざま)。つっても、もうこういうノリのバンドとしては活動していないかも(後述)。

 

 

ドラムメジャー(長いバトンを持った4人のうち、一番前にいるバンドのリーダー)のヴァニラ・ファンクことジャスティン・ヘイドマンがこのバンドのコンセプトを編み出した模様。テレビでもとりあげられるなど、一躍時の人に。

黒人音楽の影響が強くて、メンバーのほとんどは黒人です。あえて黒人を揃えたのではなくて、ジェファーソン・デイヴィス高校は貧困地区にある高校で、生徒の94パーセントが黒人、残りもエスニックが多く、白人は2パーセントのみ。

時折、脇で睨みを利かせている地元ギャング団の構成員が見えますが、あれは教師たちだと恩います。教師も黒人。

生徒の見た目も一般のマーチングバンドと違っていて、Tシャツとジャージです。この時は揃ってますが、揃っていないこともあって、リハーサルかと思ってしまいますが、これが本番。

あのジャージは学校指定のジャージじゃなかろうか。ヒップホップのジャージと同じ意味でしょう。高い金を出してコスチュームを作らなければならないんだったら、金持ちしかできないべと。楽器に金がかかるので、吹奏楽はどのみち貧乏人向けではないですが、楽器は個人負担ではなく、マーチングバンドの活動で捻出しているようですし、楽器を必要としないパートもあります。

つま先立っているように見える歩き方は、マーチングの手本となる歩き方のひとつで、このグループ以外でもよくやっています。基本は踏まえてます。

ジャスティン・ヘイドマンら先頭グループは踊るところも圧巻なのだけれど、正面を見据えて一心に爪先立ちで歩き続ける姿が力強くて凛々しいです。そのペースが速すぎて、後続隊との間が開き、ドラムメジャーの役割を果たせていないのも好き。つまりはそれぞれが自立したマーチングバンドです。

女性ダンサー集団にも注目。黒人ダンサーではよくあるのですが、全然スタイルがよくなくて、腹が出ていたりします。ダンサーは軽快さが求められるので、巨乳は敬遠されがちですが、乳がデカいのも多い。

その女たちが大股開きで腰を振ります。あばずれ。

 

 

楽器を持っている人が演奏しながら踊ることは稀

 

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このマーチングバンドは夜が似合います。

以下はニューオリンズ・マルディグラ(謝肉祭)にて。

 

 

 

先頭集団は楽器を持っていないとは言え、ずっとこの調子ですから、相当に体力は使いましょう。

では、ずっとそのあとのマーチングバンド本体はどういう動きをしているのかというと、よくわからんです。管楽器を揃って振るところが短時間見えて、あとはわずかに後方に見えますが、このマーチングバンドの動画はどれもトップ集団ばかりを撮っているものですから、はっきりとはわからない。

 

 

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